02.

 彼は、いつも、屋上にいた。


 わたしは、なるべく彼の邪魔にならないように、彼の視界に入らないぎりぎりの角度を保って屋上で過ごした。


 音楽を聴いたり。ごはんを食べたり。本を読んだり。ぼうっと校庭や空を眺めたり。


 もともと、複数人のいる教室というシステムが合わないとのいうのもある。ずっと、ひとりだったから。


 彼のことは、気にならなかった。ひとりだから、なのかもしれない。ふたり集まっているわけではない。ひとりぼっちが、ふたり。その距離感が、心地よかった。


 数日たって。


 その日は、雨が降った。


 投稿しながら、屋上に行くのは無理かなと思っていたけど。


 学校に着いて。


 屋上のほうに、それ、が、見えた。


 階段を上がる。


 屋上。


 彼がいた。


 傘も差さず、屋上に。いつものところで、フェンスに寄りかかって、その先の屋上を眺めている。


「あの」


 彼。こちらを振り向いて。


 そしてまた、校庭のほうに目を向ける。


「濡れますよ?」


 傘を、差し出した。


 自分も。屋上に駆け上がってきたから傘も鞄も持っている。


「いいんだ、濡れても」


 彼の声。低く、やさしい響き。


「風邪を」


「風邪か。風邪引いたことないんだよな」


 それが、彼との、初めての会話だった。

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