第6話

「……何と言うか、一先ず調査でもするか」

『水霧浄土はこの状況を如何にか出来る手札を持って居るのでは有りませんか?』

『……何と言うか、あのさ、多分そのファイヤーウォールを如何にか作り直せ、と言う意味なら、既存の今回の使った奴でも出来るはずだが』

『……それを試しますか』

「……何と言うか、あのさ、何で先にそっちに行くのかね?」

『ああ、シュラ。戻って来られましたか。今はそれよりも、です』

『……正直さ、今回の事を大事が起きないように如何にか出来ないと今回参加した神格個体全員が糾弾される流れに成りかねない訳だが、対抗策は無いのか?水霧浄土自身には』

『だから、今回の原因のシステムをまた使えば良いだろ』

『処理落ちの状況に更に上乗せする気か?』

『なら、だ。システムの役目を果たす役割を持つ個体でもシステムで創るか?メンテナンスシステムが壊れている今ならそれも通るかも知れ無い。何より、この件にのみ使える物ならシステム側がお目こぼしをしてきても可笑しくは有るまい』

『……つまり、今回の能力の機構を組み込んだシステムとしての個体を用意すれば良い、か』

『……解って居る。それはいわゆる人柱だ。システムと同意義の個体を用意する事でシステム自体のメンテナンスをする上での判断基準を増やしたいからだが』

『水霧、間接的に召喚システムに意思を持たせる、か。それなら確かにメンテナンスはやり易いが、そんな存在が居たら今後の全員の召喚システムの使用内容がそいつに筒抜けだ』

『今回の場合は修復作業に必要なツールは有っても、直すのに必要な作業手順が解らない的な状況だからな。最悪それを知れれば良いだけだろう。創るぞ。システムの詳細設定を知る他の神格個体にも話を通してからさ』


 そして話を通してから、その個体を創る事にした。実際、先に特許を取った方に優先権が有るのは普通の話では有る。ダブルスタンダード的な思考を有りにするのでも無ければ、他に先を越されてもそれを認めるべきであろう。其処で召喚した奴が異変を告げる。ファイヤーウォールの外からの侵入者が居る、と。だが、細かいデータが取れないらしい。……間に合わなかったか。だがファイヤーウォールは塞いでおこう。ファイヤーウォールは超えられないので、それが一時的に無く成ってから今やっと来たような奴だ。最悪居る場所をシステムのファイヤーウォールの渦中にしてしまえば倒せる可能性が高い奴でしか無い。但しファイヤーウォールが隠蔽敵な意味での物なら話は別だし、そのパターンならファイヤーウォールを修復しても既に関知されている的な意味で手遅れだけども。さて、対処しようか。システムに反応しない奴だとは言え、物質すり抜けの能力では無いはず。なら空間上に何かしら物を押しのける的な意味での影響は有るはずで、一先ず伝えられたエリア範囲を大きく囲み閉じ込める。……するとシステム側は無事だが、辺りの物が崩れ去り続け、周りの押し退けられて居る側の物の反応も更に押しのけられている。……何と言うか、大きくなって無理矢理システムを破壊しようと言う事なのだろうが……何と言うか、それがもしも出来るなら、そもそもシステムが処理落ちするなんてイレギュラーが起きる前の段階で既に来ているべきで、システムが処理落ちして機能不全に成って即座に来るなんて構図的に破壊出来ない物を如何にか出来ないか見張って居たパターン臭い。……まあ、外側が化物に満ちていて、その内の一部が偶然来た場合も有り得るけども、それで幾ら強いとか言われても意図的に来たならファイヤーウォールを壊せる可能性が低い奴でしか無さそうでな……。うーむ?壊されたのか?追加でファイヤーウォールを足しとこう。まあ全力を出せば壊せます。と言う可能性は確かに有るわな。別に一つ壊されたら終わりでも無いけど。ファイヤーウォールを範囲内全域に変更して、と。はい、終わり。


『水霧、……アレの件は良いのですか?』

『……アーバーン……例え水神とか言われてようが、この条件は確かに良い条件での開示に見えるかも知れないが……一人とはあいつは言わなかった。あそこでそれでも開示したらそいつに狙われる可能性が有る。そいつが悪寄りなら開示する奴はシステムを使って悪さをするなら真っ先に倒すべき立場に成るはずだしな』

『それは今も既にそうじゃ無いかしら?』

『共同体としての手札なら全員倒さなければ潰しきれないけど、……あー、いや、何と言うか、奴の思惑に乗るのが嫌だっただけだな。只でさえ今は難しい状況なのに、更に物議を起こすような手札の開示とかしたく無いし』

『水霧、解っているのかしら?この状況を何とか出来ない流れに成るならそれでも使うべき。それでも使わないなら完全に死蔵しないと後から遡って糾弾される原因に成るわよ。お前が舐めプをしたせいで人が死んだ……なんて言われたくないでしょう?』

『可能性が十分有る範疇の胃が痛くなる様な事を想像させるのは勘弁してくれ。解ったから。さて、システムのファイヤーウォールを解析するか。隠蔽系の奴だと更に来そうだしな』

『実際、虎の威を借る狐みたいな物よね、この勝利って』

『システムに乗っ取った強さの存在に対して、システム自体がそれを潰していく形なのだから、相手が勝てないのは当然では有る。そいつの強さの根拠其の物自体が潰される訳だし』

『今回の場合は相手がシステム外の奴だし、相手が攻略出来ない可能性が高い物を事前に解っていたから、要はそれでゴリ押しをしただけよね』

『まあ、単発一回に限るなら攻略自体はされたが、それは問題にするほどでもない事だ』

『水霧、襲撃がこれで終わりでも外部の調査もしないとアレよね』

『化物が大量に居て、その内の一部が偶々近くに居たから来たパターンなら、そうだな。まあ、相手の前提のシステム自体に相手を倒させるとかスポーツとかゲーム的には卓袱台返しも良い所なのだが、現実の世界の話だし、別に良いよね』

『……ゲーム的なシステムが全てならシステムを掌握して勝敗判定部分を自由にしてしまえば相手が幾ら強かろうが関係無い。……水霧……何と言うか、それだとまともな形では勝ててないから勝ちと言いたいだけの感じもするわよね』

『サレンダーとかで敗北を認めると退却じゃ無くてHPゲージが零に成り死亡扱いに成る系のゲームならそれで相手も本当に殺せるけどな』

『……あくまでも現実じゃ無いとそう言うのが成立するとか本当嫌よね』

『……アーバーン、提示しない根拠を元に勝てるとか言ってもアレだけど、今回の奴は相手側が後先考えないレベルの全力を出せば結局は負けの話でこちら側だけが全力ぶつけて上回ったと言う話だろ?同じ様にしたら倒されるとか杞憂しようにも状況条件的な意味で此方に当てはまる条件はそれには無いのでは?』

『そうね。システムが処理落ちしたから結果として実力も潰れたのよ。数千数万レベルの数の能力が一か所で溢れた訳だし、仮に処理落ちするレベルを対処出来てもシステムが処理落ちするレベルの現象が起こり直すだけ。即座にシステム修復と改良出来ます……とか言われてもアレだけど……』

『それをやれるとしたら召喚システム作成者だろ。何処か他の神では無く。いや、召喚システム作成者が神なら別だが、その場合最初からそれが有りの状況で世界を作れば良いのに、何で後から付け足す形で創ったか?と言う問題がね?故に創造主とか、その関係者の神とかはシステム作成者とは別口っぽいな』

『……それなら納得では有るわ。そもそも完璧に完全に造るなら処理落ちなんて概念は無くて良いもの。あ、少しヤバイ事に成る事を見落としていたわね。ドッペルゲンガーとかの他の奴の能力を使える奴にとって、どこにでも存在するような存在は能力を借りる相手として有用過ぎるわ。近くに対象が居ないと変身対象に成らなくても何処にでも居るもの』

『あかん奴だな。だが、この世界の水、つまり、此方の身体を使って成立する以上そう言う輩が出たら能力の都合上、例外漏れ無く此方の支配下だろ。この世界に居るなら、だけど。何せそれは相手の制御下の物を特に制御下から外さずに体内に飲み込むのと同じだし』

『さて、今は最後にするけど、他の力を消すなり、壊すなり、崩すなり、どうこうする力って基本的に自分側が格上なのが前提なのよね。通じる前提で物事を考えるのは格上を相手にする事を考慮して無い訳だけど』

『……何と言うか、使い方次第で総合力で上回って居る必要の無い場合も有る事は有るが、部分的で有ろうがちゃんとした理屈が有るなら上回って居るのは必要じゃないかな。上回って居なくとも勝てる方法論を専用に用意したら別だろうがね』

『じゃあ調査を始めましょうか』


 そして調査を行う。だが、その結果外の奴に見つかり逆に喧伝する形に成った。いや、他の世界の敵の集団にでは無く、未開地に居る野生動物的な意味での外敵にだが。幾ら強い奴でも此方の世界に入ると弱体化する奴がそれなりに出た。要はそれの原因は高山病の一種と推測される。それは一時的な物で、弱くなった奴を世界から追い出すと元通りの強さに成った為だが、つまりは、自陣営の世界以外の場所では互いに適応完了迄の間に、強制的にデバフが入る仕様と言う訳だ。まあ、世界のステータス評価仕様違いが原因かもしれないが。そしてある程度調査を続けて居ると、俺達の意識は途絶えた。

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