鬱ゲー転生。 知り尽くしたギャルゲに転生したので、鬱フラグ破壊して自由に生きます【旧題】泣きゲーの世界に転生した俺は、ヒロインを攻略したくないのにモテまくるから困る――鬱展開を金と権力でねじ伏せろ――
第195話 姉妹喧嘩は百合豚も食わないことはない
第195話 姉妹喧嘩は百合豚も食わないことはない
ミケくんチームとのレース対決は、ラップタイムにおいては、俺たちのぶっちぎり勝利となった。
なお、俺たちの合成写真の衣装は、ドレスあり、装飾品なしという微妙な感じになった模様。何人か撃ち漏らしたからね。
一方のミケくんの写真は、ばっちりキラキラピカピカの完成形のシンデレラスタイルであった。でも、向こうは向こうで写真撮影の瞬間に、ミケくんが上手い事姿勢を低くして映るのを回避したため、平娘ちゃん一人のプロマイドのようになっていた。
「どうやら、ボクたちの負けみたいだね」
「いえいえ、ドレス勝負ではこちらの負けでしたよ」
「それじゃあ、引分けということでいいのかな?」
「ですね。せっかくですから、もう一勝負どうですか?」
「ああ、もちろん」
ミケくんが朗らかに笑って頷く。
どうやら、そこそこは楽しんでくれたようだ。
ビジネススマイルの可能性もあるけど、ミケくんは不必要な場面では演技はせずに、素直に感情を表にするタイプだからな。っていうか、そうじゃないと、ゲームのプレイヤーの視点人物として感情移入しにくいし。
「ヘルメスさんも、それでいい?」
「ええ」
ヘルメスちゃんが心ここにあらずと言った感じの気の無い返事をする。
「……一応、今、アイに次のアトラクションのところに来てくれるように連絡したよ。命令ではなくお願いの形なので、来るかは彼女次第だけど、俺の感触では八割くらいの確率でくると思う」
俺はスマホの画面をヘルメスちゃんに見せて囁く。
あっ、そうそう。最近、ついに自社開発のスマホができたんだよ。
そして、この世界では、lin〇ではなく、俺氏のbineが覇権をとらせて頂きます。
「本当!?」
ヘルメスちゃんがぱっと顔を輝かせる。
「うん。でも、もし当てが外れたらごめんね」
などと、予防線を張る俺。
「それで、次はどこに行くんだい?」
「ええっと、『ネバーランド』ですね」
俺はミケくんの問いに、答えて言う。
『ネバーランド』は身体を動かす系のアトラクションを集めた広場だ。
「早く行くわよ!」
ヘルメスちゃんが急かすように俺の手を引く。
「ちょちょっ、そんなに慌てなくてもアトラクションは逃げないよ」
俺はそんなテンプレ応答をしつつ、ヘルメスちゃんに歩調を合わせた。
やがて、孤島を模したドーム状の建物の前まで俺たちはやってきた。
「人を働かせておいて、女とイチャコラなんていいご身分ねぇ、マスター」
「……」
果たして、アイちゃんは来ていた。
もちろん、タブラちゃんも一緒だ。
「アイ、よく来てくれたね」
俺はアイに向けて笑いかける。
「売られた喧嘩は買うわよぉ。アタシがそこの女に勝ったら、マスターを一日好きにしていいんでしょぉ? 楽勝ぉ」
アイちゃんが不敵な笑みを浮かべて言う。
それが、アイちゃんがヘルメスちゃんとの勝負を受ける条件であった。
「ああ。約束する。その代わり、ヘルメスさんが勝ったら、アイもヘルメスさんに一日好きにされるんだよ。あ、あと、言うまでもないけど、異能はお互いなしね」
俺は頷いて答える。
「ちょっと、ユウキ、どういうこと?」
「ヘルメスさんとアイが向き合う機会をどうやって確保しようか考えてみたけど、俺にはこれくらいしか思いつかなくて。舞台は整えたから、後はヘルメスさん自身の力でなんとかしてよ。勝負で決着をつけたことなら、アイは約束を守ると思うから」
ヘルメスちゃんはシンデレラにはなりたくないそうなので、これ以上のお膳立てはしない。祝福は自分で勝ち取ってもらおう。
「なるほど。そういうことね。――でも、なんでユウキがウチのためにリスクを負ってくれるの?」
「――ただの自己満足だよ。せっかく、姉妹が近くにいられるんだから、仲良くできるならそれに越したことはない」
俺は遠い目をして言った。
言うまでもないですが、楓ちゃんを意識しての発言です。
「……ユウキ」
「それに、俺はせっかくの機会だから、ヘルメスさんにも純粋に遊園地を楽しんで欲しいんだ! だから、アイに勝っても負けても、この勝負を一つの区切りとして、今日の所はひとまず遊園地を楽しむことに集中してくれると嬉しい。強いていえば、それが俺への対価、かな」
俺は憂いを振り払った笑顔で言った。
さあ、ヘルメスちゃんよ。遊園地を満喫しろ。そしてミケくんとくっつけ。
「そうね……。わかったわ。どっちに転んでも、ユウキの言った通りにする。ありがとう」
ヘルメスちゃんが決然とした表情で頷き、俺に礼を言う。
俺自身がリスクを負ってまでヘルメスちゃんにチャンスを与えた。
ヘルメスちゃんへの誠意としてはこれで十分だろう。
勝負の結果は、正直分からない。
異能なしを前提とするなら、ヘルメスちゃんの方が姉で年上だから、肉体的発達では勝る。
でも、今のアイちゃんは本編と違って、異能なしでも反射神経や運動能力が強化されてるというアドバンテージがある。
それらを総合してもなお、俺の見立てでは、7対3くらいでアイちゃんが有利かな、と思っていた。
そうなると、俺氏が一日アイちゃんに好き勝手されちゃう訳だけど、大丈夫かな?
アイちゃんがその気になれば、俺氏の貞操なんて一撃粉砕されちゃうんだけど。
まあ、今から気にしても仕方がないか。アイちゃんがやる気なら、もうとっくにそうなってるはずだしね。
「えっと、なんだか色々と訳ありみたいだけど、とりあえず、ここで立ち話をしていてもしかたないし、中に入ろうか?」
「ええ。すみません。入りましょう」
ミケくんに促されるように、俺たちはネバーランドの中に入った。
「それでぇ? アタシに何をさせようって言うのよぉ」
「えっと、それはね――あったあった。あれ。あの赤い円盤の靴があるとこ」
俺は場内を見渡して、目的のアトラクションを指さす。
掲示板に記されたアトラクション名は、ずばり、『赤い靴の永遠ラリー』。
その内容は、一言でいえば、手の代わりに足を使うエアホッケーだ。
雪国で使うかんじきのような円形のプラスチックプレートに足を固定し、円盤を蹴って相手側のゴールに入れて遊ぶ。
「二人組と四人組に分かれるってことでいいのかな?」
ミケくんが確認するように尋ねてくる。
彼の言うように、そこには二人用と四人用のスペースが用意されていた。
「ええ。こちらは四人用で楽しみましょう。俺はこの子――タブラと組むので、そちらは先ほどと同じペアで」
俺はタブラちゃんの肩に手を置いて言う。
「了解。ボクは初心者なのでお手柔らかにね」
そう言ってイケメンスマイルを浮かべるミケくん。
「いやいや。俺も初めてなので、手は抜けませんよ」
俺は好戦的な笑みを浮かべて答える。
つーか、この中で一番身体的スペックが低いの俺だし。
ミケくんはもちろん、平娘ちゃんだって一応は改造人間だからね。
それに加えて、そもそもタブラちゃんはゲームのルールを理解できるのかも怪しい。
まあ、こっちは消化試合なので、試合の結果はどうでもいいか。わちゃわちゃ楽しくやろう。
そんなことを考えながら、俺はタブラちゃんの脚を取り、優しく赤い靴を履かせてやるのだった。
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