C4 スズメ
ムックリと厚い羽毛のダウンを羽織り、スズメは純白の中を跳ね回る。
純白は本当の純白であって、光の反射によってヒトが感覚的に捉える白とは異なるものである。よって、スズメには影がないし、視覚というものもない。
見えるものは全て白いのであるから、スズメは自身のそのムックリとした羽毛のダウンでさえ捉えることができない。するとなぜ、スズメはダウンを羽織っているとなど言い得るのだろうか。私の中にスズメが居るということ以外、その事実は証明しようがないのだし、あなたはそのスズメを視覚的にも、またあらゆる感覚を研ぎ澄ませようと存在を知覚することはできない。
大きな意思はスズメの姿を描くのであろうが、いったい誰がそのスズメを、ダウンを想像の世界に押し込めるのであろう。
元来、無理難題であるのだけれど、なぜかその姿は描かれるのである。
これはなんと呼ぶべき欲求であろうか?小人が歩みを続ける意味が、轟々とした吹雪にかき消されてしまったように、スズメであってもその純白に存在を包み込まれてしまうのだろうか?スズメに表情はないのだけれど、その跳ね回る姿に私は微笑む。これは、ヒトの遊びであり、小さな幸せであるはずだ。
忘れてはいないだろうか。思い出と呼ばれるものは、現実の世界だけで得られる現世の報酬であると盲信していないだろうか。想像の世界にヒトを描き、スズメを跳ね回らせるのだ。いや、スズメの存在を、純白に設置するだけで良い。ヒトを産み落とすだけで良い。彼らはその場で勝手に…跳ね回るのであるし、恋に悩み、家を建てるのである。むしろ!現実の世界の他人たちと比べてみても、彼らは自由である。いうことを聞かない。そんなにも彼らは意思を持っているのだから我らは想像の片を絶やしてはいけなかった。
純白の冷気をあなたに送る。その寒気は、秋の訪れではないよ。
空白のシートを埋めてみよう。スズメが飛び跳ねるところを静かに眺めよう。
小人は甦らないのだけれど、その写真は壁に貼られている。
さて、鮮やかな思い出をつくろうね。
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