C2 歩み
どこまでも歩く。どこまでも、どこまでも歩く。
その歩みのペースの“鈍さ”は、意志の衰弱を表している。
「もっと私の足を動かせ。なぜそんなにもセコセコと時間を浪費しているのだ。
私の足を動かせ!次の集荷の時刻は迫っているのだろう?
私は知らない、回収員の年齢も、見た目も、髭の本数だって。果たして人の姿をしているのだろうか。どこまでも、歩みを進めるのだ。私の意志の衰弱は許されない。それはあなたの幸福を奪うことなんだ。わかってほしい。あなただけにはわかってほしい。私にはあなたしかいないのである。あなたは人なのだ。人は、いくら科学技術の進歩を目の前の精巧な端末へ押し込めることができても、その意識を、自らの意識の外側へ押し出すことはできないんだ!わかってほしい。想像の片を私に恵みなさい。あの頃のあなたは。どこへ隠れて怯えているの?私の悲しみに気づくこともないでしょう。だけれども、いつか!大きな悲しみに襲われるでしょう。私は、あなたと繋がっている。いつまでも。氷山は大きいものだ。私はあなたの意識の水面下に潜り込んだとしても、それでもあなたである。いつかその水面だって、荒波に飲み込まれて、水しぶきを上げて、なくなってしまうかもしれないのだから!悲しみは私を思い出させる。どうか、希望が絶えぬうちに…。」
もうほとんど足は無い。両の足、その他の多くの器官の存在証明は消失を目前としている。これは危機であるのだ。どうか私よ、その森で小人の歩みを止めないでくれよ。
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