架空ラノベバーチャル読書会 ゲスト:坂口やすき

「おはきょむでございます。今回はですね、『わたしの犬はお座りができない』の著者、坂口やすき先生をお招きして、架空ラノベバーチャル読書会をしたいとおもいます。作品の紹介からだいぶ経ってしまったのですが、なにやらものすごい新作が予定されているとかで、いろいろ悩んだ結果読書会をするに至りました。坂口先生、そちらは大丈夫でしょうか?」


「はい大丈夫です。犬の入れないロフトでぎゅうぎゅう詰めですが、なんとかなりそうです。あの、吠え声とか入っちゃったらごめんなさい」


「犬のひとだったんですね、坂口先生……まずは執筆環境のお写真からいこうと思います」


(すごく狭いロフトにパソコン機材一式を詰め込んである写真)


「ロフト……ですね……秘密基地というか」


「前はふつうに机の上に機材を置いていたんですが、犬が机によじ登ってかじり壊してしまって。あとモデムも机の上だったんですがおしっこかけられて壊されちゃって」


「ひえ、犬すごい。それでロフトに逃げ込んだわけですか」


「そうですね……さすがに犬ははしごを登れないので。ただ僕自身が足を滑らせてコケるやつを度々やっていて、命の危険を感じています」


「あの、これは提案なんですけど、喫茶店とかで書かれるというのはどうでしょうか」


「いや……犬たちを監督しておかないと、いつなにをやらかすかちょっと分からないので。さすがに3頭いると目をはなした隙に破壊工作を始めるので」


「さ、3頭?! なんでまたそんなに」


「母犬が野犬の同胎犬をまとめて引き取ってきたんです。要するにきょうだいですね。オス2頭メス1頭で、ヤスハルとマスタツとノブヨと呼んでおります」


「まさか大山康晴と大山倍達と大山のぶ代ですか? 強そうな名前だ……」


「将棋名人と空手家と未来の猫型ロボットですから。犬ですけど」


「いや犬に猫型ロボットの中の人の名前つけるってなかなかクレイジーですね……」


「まあ細かいことは気にしない気にしない。動物を飼う人間に求められるのはおおらかさです。うれションされて服が汚れたら洗濯すればいいし、ふすまを破壊されたら直せばいいんですよ」


「い、犬~~~~! そんなことするんです、犬って?!」


「しますよそりゃ。犬ですからね。ある意味猫より不条理な動物かもしれません。吹雪さん、ああ吹雪都丸さんとたまにオンライン飲み会するんですけど、猫はトイレの場所も決めてるしご飯の時間も律儀に守ると聞いてうらやましいなあと思ってます。犬、人間がなにか食べてるとめちゃめちゃ欲しがるので……」


「ひえ……では、架空ラノベ作家になった経緯を教えていただけますでしょうか」


「ええと。活字中毒なんですね、僕。子供のころからずっと活字を見つけると追いかける人間で、学校の昼休みとかひたすら本を読む、いわゆる本の虫だったんですよ。その息抜きが犬の散歩だったわけですが」


「活字中毒。わかりますその気持ち」


「そんなことをやっているうちに学校の図書室の本をコンプリートしてしまって、実家がとんでもない田舎だったので図書館も本屋もなくて。これは自分で本をつくるほかないと、役場の払い下げのパソコンを買ってきてパチモノのワードで小説を書き始めたのがきっかけです。あのころはまだ紙の原稿を受け付けている新人賞がほとんどだったので、ボロボロの何世代も前のパソコンでもどうにかなったわけです。たまたま父の職場にプリンターがありましたし」


「なるほど~。で、当時はどういうものを書かれていたんですか?」


「犬とおしゃべりのできる異能の話を書いていました」


「……ぶれない……」


「たぶん、犬っていろんな感覚が人間より優れていると思うんですよね。嗅覚とか動体視力とか、人間のついていけない感覚をいろいろ持ってるんだと思うんですよ。それを聞き出して探偵をする『犬探偵ポチ』というのを書いてました。それがたまたま編集者さんの目に留まりまして、いまはファンタジーが流行りだからもっと剣と魔法の世界でそういうの書かない? と言われて、デビュー作の『世界を救うには犬(ケン)が必要です』が爆誕した次第です」


「デビュー作ってそんなのだったんですか。ぜんぜん知らなかったです。読んでみたいですがいまも買えますか?」


「まあ電書一択でしょうね。当時コミカライズもされたんですけど、あのころは漫画のネット連載とかなかったので、ふつうに雑誌に載ったもののアンケートの評価がよくなくてどんどん後ろに流されていき……という感じで、原作完結までは描かれませんでした」


「うわきょむ……『世界を救うには犬(ケン)が必要です』、あとで電書で探して読んでみようと思います。それでは質問コーナーに参ります。まずはですね……『わたしの犬はお座りができない、とても面白かったです。血統書付きの犬を飼っていらしたのでしょうか?』という質問ですが」


「昔本物の秋田犬と暮らしたことがあります。父が犬好きで、まさに『血筋のいい犬』というものの楽しみを知っている人でした。楽しかったですよ、それこそ展覧会に出陳して、立ちこみをさせて審査されて、いちばん美しいと評価されると嬉しいものです。いま飼っている犬はみんな雑種ですが、血統書付きの犬とはまたぜんぜん違う楽しさがあります。どちらがいいとか悪いとかいうものではないと思いますよ。ただパピーミルとか悪質な繫殖業者とか無理なミックスとかはこの世の悪です」


「吹雪都丸先生の犬版みたいなことを言っておられる……つぎの質問に参りたいと思います。『吹雪都丸先生とよくツイッターでやりとりなさっているのを拝見していますが、犬派と猫派で噛み合わないこととかってないのでしょうか。また、ニンジャ・キャッツがこのステの一位だったのは犬派としてどうでしょうか』という質問です」


「いや、犬派も猫派も関係ないと思いますよ。動物好きはふつうどっちも好きです」


「そういうものなのですか、犬と猫って」


「ええ。僕は犬が好きですが、猫の飼いやすさの話を聞くと猫も飼ってみたら楽しいだろうなあって思いますし、吹雪さんは犬がいたら運動不足が解消されそうでいいなあってよく言ってます。架空ラノベ作家としてのキャリアも同じくらいなので、よい仲間でよいライバルみたいな感じですね。でもつぎの『このステ』一位は僕の犬小説で獲りますけど」


「頑張ってください! では最後の質問です。『しびれびれ文庫の編集者さんがツイッターで坂口先生の話をされているのですが、サンダル文庫から移動するのでしょうか?』という質問です。これはきょむもずっと気にしておりました」


「ああ、ご心配おかけしております。サンダル文庫としびれびれ文庫は同じ出版社系列なので、ときどきまたいで書いてる人いるんですよ。サンダル文庫の『わたしの犬はお座りができない』も続きますし、しびれびれ文庫からも新刊が恐らく出る、という感じです。しびれびれ文庫のほうでは、ちょっとファンタジーっぽいというかミリタリーというかミステリというか、みたいなものを書くことが決定してます。もろもろの作業を終えたら五月くらいにはしびれびれ文庫さんから新刊が出ると思います」


「おおおそれは期待きょむ! ものすごい新作ってそういうのですか! 期待して待とうと思います!」


「ありがとうございます。きょうは禁則事項ょむって言わないんですね」


「期待されてた?! ……まあきょむの年齢は禁則事項ょむですので。セリフ朗読いってみたいと思います。『わたしの犬はお座りができない』265ページ、シゲさんとまなみが吾郎太のお座りができない理由について話すシーンを、きょむがまなみ、坂口先生がシゲさんを読みます」


「緊張する……」


 ◇◇◇◇

「この吾郎太ちゅう犬はよ、立ちこみをするためにお座りができないんでないかい?」

「立ちこみ……? って、ショードッグということですか?」

「そうよ。こんないい犬そうそうおらん。書類ももらってきてるじゃろ、出してみればいい」

「……それ、すごく面白そうですね……!」

 ◇◇◇◇


「ふう、無事に読めた……」


「それでは、この先の展開についてよろしくお願いします!」


「五月にはしびれびれ文庫さんから新刊が出ます。『わたしの犬はお座りができない』も続刊が決定しています。なにとぞなにとぞ」


「坂口先生、ありがとうございました! それではきょむなら!」


「きょむなら~」

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