架空ラノベバーチャル読書会 ゲスト:池波踏張朗

「おはきょむ! 今回は『大河ドラマのモブに転生したのでオリキャラになって生き延びる』『サムライ・ファイナライズ』の著者、池波踏張朗先生をお招きして、バーチャル読書会をしていこうと思います! 池波先生、そちらは大丈夫でしょうか?」


「……いざ『池波先生』って呼ばれると時代小説の文豪になった気分が高まりますね……大丈夫です。機材、借り物ですけどどうにかなりそうです。よろしくお願いします」


「よろしくお願いします! それではまずは執筆環境のお写真からいってみようと思います。リビングで書かれてらっしゃるんですね」


(ありがちなリビングのテーブルの上にノートパソコンが置かれている写真)


「はい。本当は書斎とか喫茶店執筆とか憧れるんですけど、あんまりそういうのに割ける余裕がなくてですね。いまだに劇団に憑りついた貧乏神を引きずっております」


「劇団……というと、池波先生が脚本を書かれている劇団のことですか? 架空ラノベ作家になった理由も教えていただければ幸いです」


「はい、もともと役者になりたい人間だったんです、僕。でも僕の容姿は特にイケメンというわけでもなければインパクトのある見た目というわけでもなくて、『ああ僕の代役をできる人この世にうじゃうじゃいるな』と思ったので、役者を諦めて脚本書いてたんですけど、なんせいわゆる小劇団なのでみんなとにかくひたすら貧乏で。それでセイリューブックスの新人賞が賞金モニョモニョ万円と聞いて飛びついた結果、賞はいただけなかったんですけど拾い上げで書籍化されまして。そういうわけでありがたくちょっとずつ借金返してます」


「拾い上げだったんですか、『大河ドラマのモブ』。すごく面白かったです」


「あああうれしいです……劇団ではみんな脚本読んでおもしろいとかつまらんとか反応くれるんですけど、架空ラノベにそういう反応いただいたことがなくて。それなりに売れているのは知っているのですが、きょむちゃんの動画とかきょむちゃんのタグとかで探してみないと反応がなくて。作家になればファンレター貰えるというのは幻想だと知って凹んでました」


「そ、そんなめっちゃリアルな……! それからもう一枚画像を頂いているのですが、これは……」


「僕のいる劇団の次の公演のチラシですね。自分が借金してるだけでなくこいつらに貸してもいるので、こいつらを応援してくださればその分僕にもお金が返ってくるシステムです」


(きょむ盛大に噴く)


「ごめんなさい笑っちゃいました。きょむ、田舎育ちなのでこういう小劇団の観劇って行ったことないんですけど、チラシをみるとすごく面白そうなのでスケジュールが合ったら行ってみます。なんだか不思議なお話みたいですね、小説の中の世界を旅するんですか」


「『大河ドラマのモブ』を読んで頂ければ分かる通り、なんていうかメタ的構造の作品ばっかり演じてる劇団なんです。もともと『大河ドラマのモブ』は脚本だったのを小説に書き直したものです。うちの劇団には演じられるほど衣装代がないということでお蔵入りしてたんです」


「なるほどょむ……じゃあ小説としての処女作はどっちかっていうと『サムライ・ファイナライズ』のほうなんですね」


「そうです。小説はすべての役を自分が演じられるので、すごく楽しかったです」


「ふーむなるほど……いろいろ質問が来てますので、お聞きしていこうと思います。まずは……『サムライ・ファイナライズ面白かったです。ペンネームの由来はリアル時代小説作家なのでしょうか、他にも由来があるのでしょうか?』という質問です。冒頭でおっしゃっていましたが、あのリアル大作家の名前からなのですか?」


「うーんと……正直に言うとあんまり読んだことないんですよね、ペンネームの由来になってる大作家の作品……なんかカッコイイ名前で、僕本名が池田なんですけど、ちょっと似てるなと思って芸名として名乗ったのが最初ですね。それで当時、劇団のみんなからは『大先生』ってあだ名つけられて、架空ラノベ作家になってからは『御大』と呼ばれてます」


「面白いですね、劇団のみなさん……」


「あいつらデタラメに面白いんです。あいつらももっと売れていいと思うのですが」


「では次の質問です。『時代物っぽいものを書かれている印象があるのですが、なにかこだわりはあるのでしょうか? ペンネーム的にそうなのでしょうか?』という質問ですが」


「自分では時代物書いてる意識はまっったくないですね。『大河ドラマのモブ』は御大の頭の中で展開されるメタな作品ですし、『サムライ・ファイナライズ』のほうはSFだと思ってます」


「へええー意外ょむ! でも思えばそれも確かに、って感じですね……!」


「それでもサムライとか武将みたいなモチーフは嫌いじゃなくて、それをただ違う世界にはめ込んだ感じです。だってカッコイイじゃないですか。演劇をやろうと思ったのは中学のころテレビで再放送されてた時代劇を見たのがきっかけでして、そこから貧乏になるのが宿命づけられた感じですね」


「貧乏って宿命なんですかね……では次の質問です。『シシガハラ・メグちゃんのぱんつの色教えてください!』うわすごくストレートだ!」


「いや質問チョイスしたのきょむちゃんじゃないですか。メグちゃんは和装なのでぱんつ穿いてません!」


「ええええー! まさかのノーパン! 和服ってぱんつ穿かないものなんですか?!」


「はい、正しい和装では湯文字という簡単な下着はつけるそうですが、いわゆる現代のぱんつは穿いていないです。というか和装というのは上手く着付けてもらうとすごく楽なものだそうですよ」


「あー、たしかにそうかもです……! きょむ、友達の結婚式にいい歳ぶっこいて振袖着ていったんですけど、うまい人に着せてもらったらあったかくて防御力上がって最高でした……!」


「いい歳ぶっこいてってきょむちゃん自分から歳ばらしにいかんでも……」


「きょむの年齢は禁則事項ょむなので……」


「あっこんなフワッとしたのでも禁則事項ょむ聞けるんだ……」


「おっほん。えっとですね、質問がもう一つありまして、『高校生で演劇部員なのですが、面白い脚本が書けません。どうしてでしょうか、助けてください池波先生』という」


「そっちかー! えっと、まずは……高校の先生も言うかもしれませんけど、座談会になってないか確認するといいと思います。座談会っていうのは要するになんの動きもなくお喋りしてる状況ですね。これはまずい。僕が高校のころ書いてた脚本がまさにそれでした。僕がアドバイスできるのはそれくらいですので、書店で脚本術の本を探してみるといいと思います」


「リアルなアドバイスですね……ありがとうございました! ではセリフ朗読のコーナー行ってみたいと思います! えっと、『サムライ・ファイナライズ』の223ページから、テツノジョウとメグのにらみ合いの会話を、きょむがメグ、テツノジョウを池波先生が読みます」


「セリフを声に出すの久しぶりでワクワクしますね、では」


 ◇◇◇◇

「テツノジョウさま……あなたはただの人でない。アカガネノショウの古代兵器で、この世を平らかになさる方です。しかしながらそれは破滅と同義!」

「わかっておる、わかっておるのだ。しかしだとしてもやらねばならぬ。わしはもう、戦で乱れた世を見るのがいやなのだ!」

「それならば――兄上から引き継いだこのもののふの体で、テツノジョウさまを粉みじんにするのみ!」

「世を平らかにするために死ねるなら本望というものよ! かかってこい! 返り討ちにしてくれる!」

 ◇◇◇◇


「いやあ恋仲一歩手前の関係とは思えない会話だなあ」


「ちょっと時代がかっててカッコイイセリフ回しですよね……! では、差し支えない程度に、今後の予定を教えていただければと思います!」


「えっとですね、すごく言いづらい、っていうかいままできょむちゃんの読書会企画に登場した作家さんはみんな続刊の話をしていたのでアレなんですけど、『大河ドラマのモブ』も『サムライ・ファイナライズ』も、打ち切りが決定してます」


「えええー?! ってことは『サムライ・ファイナライズ』の古代兵器の正体分からないんですか?! すっごいショックです! えええー?!」


「ごめんなさい! ファンレターバシバシくればあるいはって感じなので、万が一出るとしたらファンレター作戦以外ないです……ごめんなさい……それでなければ『なるぜ』でランキング一位を取って新作で戻ってこようと思います……」


「あわわわ……衝撃の報告でした……そろそろお時間です……きょむなら……ドンマイ……」


「きょむなら、ドンマイ!」

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