第4話 村の行事

村では年に一回お祭りがある。

村から少し離れた、といっても大分遠い町では、胡弓を使う盛大なお祭りがあるのだが、それを真似して、この村でも始めたらしい。昔、村の一人が町に出向き、わざわざ習ってきたという話が残っている。

ただ、この村では胡弓を弾きながら踊るのではなく、胡弓の音に合わせて踊る。歌い手も別に用意して胡弓の隣で歌う。曲も歌詞も適当で決まったものはなかったそうだが、昭和に入ってから、だいたい決まったものが弾かれて歌われたそうだ。

そんな村総出の祭だが、スミとヨウマは参加しなかった。

女手一つで切り盛りしているし、ヨウマも手伝って働いていたからだ。

そもそも、ヨウマは祭りに参加したことがない。参加したいとも言わなかった。そんなヨウマに、スミはありがたいと思っていた。

祭りにでれば、皆に何か言われるだろう。それに自分は耐えられるだろうか?

しかしヨウマも大きくなり、学校に通うようになって、村の雰囲気も感じ取れるようになった。そして学校で組の皆が話しているのを聴いて興味が出てきた。

「かああちゃむん、ま、ままつりて、なんに」

「あ、ああ。神様にお祈りするんだ。今年はありがとうとか、お米が沢山とれますように、とか」

そう言いながら、スミは改めて神様を憎んでいることに気付いた。

「おえ、おいおりいたい。かああちゃんといしょに」

ヨウマは笑った。

「……今年は、忙しいからなあ」

スミの逃げの言葉に。ヨウマは笑顔で頷いた。

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