第2話 きっかけ
友達はすぐできた。
毎日が楽しく、友達が話すその地域特有の、なまりがきつい方言ひとつひとつがすごく新鮮で、遊びから帰ると台所で夕飯の仕度をしている母親に、少しあしらわれながらもそれらを丁寧に真似て自慢した。
母は笑って聞いてくれていた。
その頃の両親は働き者で、2人共に建てたばかりの家のローンを払う為にと、必死で頑張っていた様に見えた。
父は大型製鉄所の下請けに務め、休日には草野球を楽しんでいて、それによく僕を連れていってくれていた。
母もハム工場のパートをしていたため、僕が家に帰宅する時間には両親は帰っておらず、自ら鍵を開けて家に入る事が多かった。
少しすると、中学校から姉が帰って来て、通例行事のオヤツの取り合いで喧嘩になり、必ず負けてふてくされる僕は、宿題をせずに遊びに飛び出す。
その頃を振り返ると、日々がありふれていたけども大切な幸せだったと思う。
僕がいじめを受けだしたのは越して数カ月ぐらいたった時だった。
登校は、近所の小学生らが学年関係なく集まり班を構成し、最高学年の中から班長を選出、その班長を先頭に集団で登校する。
きっかけはその班の登校中に起こった。
班の中にはいつも上級生からからかわれたり弄られているやつが居た。
その日、僕はずっと思っていた事を、その上級生にぶつけてしまった。その相手は班長
「なんでその人ばっか虐めるん?」
きっかけはこの言葉だった。
その言葉をきっかけに、ターゲットは越して来たばかりのよそ者の新人、僕に移った。
同級生は皆良い奴ばかりで、学校が終わってからの遊びは楽しかった。ただ、時折からんでくる例の班長とその取り巻きに会うのは嫌だった。
そう広くない団地では、上級生や下級生が混ざりあって野球やサッカー、けいどろなどをして遊んでいる。
例の班長とも例外なく一緒になって遊ぶが、遊びの中で必ず自分だけがターゲットになっていく。
毎回毎回、からかわれ、笑われる。
そこから泣いて家に帰る日々。
僕は二年生で、初めて学校へ行くことを拒否した。
分厚い壁 未設定1 @tomy313
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