第1話[加害者]

記憶を消す…。

つまり、人の記憶を操れるって事?

だったら、静香のイジメられた記憶を消せば、あの子は学校に来れるかも。

そう思い、彼女に相談する。

すると…。


「可能だけど、華はそれでいいの?」


彼女の言葉に私はハッとした。

自分で追い詰めといて、都合の良い様に彼女の記憶を変える。

何て最低なんだ。

自分のクズさに嫌気がする。

自己嫌悪に陥る私にミミは励ましの言葉を送ってくれた。


「元気出す。」

「あなたは魔獣達から友達を守ったのよ。」

「それに、過去に犯した罪は今償えばいいの。」

「だからねっ、笑って。」


「うん。」


そうだ。

彼女の言う通りだ。

過去に犯した罪はどう足掻いても消えない。

なら、静香の側に居て、彼女が立ち直るまで支えてあげよう。

それが私にできる償いなのだから。

私はその日以降、魔獣を殺しつつ、毎日静香に会いに行った。

そんなある日の事だった。


「えっ、声優になりたい?」


「うん。」


彼女は将来の夢を嬉しそうに語った。

私もそれを応援しようと思う。

ただ、その夢を持ったきっかけが少々納得がいかないものだった。

大好きなアニソンを買いに出かけた際、見知らぬ少女と同じCDを手にし、そのまま意気投合したとか…。

何その恋愛漫画とかにありそうなパターンは、少し妬けてしまう。


「でね、十六になったら、叔父さんが経営しているコンビニに働かせてくれるって。」

「シフトとか合わせてくれるって言ってくれたの。」


嬉しそうに話す静香を見て、私も自然と笑顔になる。


「コンビニが辛くなったら言って、私ん所でも働ける様、両親に頼むから。」


「華ちゃん所のお花屋さんかぁ、私に似合うかな?」


「似合うよ。」

「静香が出れば家も男性客のリピーターが増え大繁盛だよ。」


そう言って二人で笑い合う。


「それでね、華ちゃん。」

「できれば勉強も教えてほしいんだけど…」


静香…。


「もちろん、何でも聞いて。」

「私、成績だけは良いから。」


夢に向かって頑張っているんだね。

それなら、私も全力で応援しないと、彼女に対する罪を償う為に。

その日の夜。

彼女は自室で首を吊って死んだ。

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