淡々とした二人『百合ぽい』
赤木入伽
淡々とした二人
【第一話】
愛の告白と言えば、時にひっそり、時に情熱的にするものと誰もが思いますが、
「……私、好き。蓮奈さんのことが。恋愛的な意味で」
「そうですか。……他に言うべきことは?」
まるで業務連絡のような会話が、この少女二人の告白風景でした。
ちなみに今は学校の教室で昼休みの最中でしたが、あまりに淡々とした会話だったので、この告白イベントに気づいたクラスメイトはいませんでした。
しかも続けてされた会話が、
「……そういえば、代わってもらえる? 来週の図書委員の当番を」
「たしか、火曜日ですよね? ……それならいいですよ」
「……ありがとう。……それじゃ、私は食堂に」
これで会話は終了し、告白をした少女は教室を出ていき、残された少女はお弁当の準備を始めました。
ただ、残された方は、
「了承の返事は、いつまでに済ませればいいかしら?」
そう小さく言いました。
【第二話】
なんだかんだ付き合うことになった秋川蓮奈と原田霧子という少女二人は、とある日曜日にデートすることに。
デートと言えば、時にハメを外し、時に潜熱的にするものと誰もが思いますが、
「霧子さんは……遊びたい場所などの希望はありますか?」
「……別に。しいて言えば、家で寝たい」
二人とも無計画で、ただ淡々と駅前に集合していました。
しかも続けてされた会話が、
「あ……、すみません。財布を忘れてしまったみたいです」
「……じゃあ、家に?」
「そうですね……。帰りますか」
世界最速でデート終了となりました。
ただ、家で寝たいと言い放った霧子が「あー」と思い出したように口を開きます。
「……意味が違うから。寝たいって言っても。……蓮奈さんに膝枕してもらえればいいから」
その言葉に蓮奈は長い長い沈黙をしましたが、やがて「わかりました」と頷きました。
二人は淡々と帰路につき、淡々と手をつなぎました。
【第三話】
「二人が付き合っているって本当?」
ある日の昼休み、秋川蓮奈と原田霧子はクラスメイトに聞かれました。
二人は自分のプライベートを言いふらすタイプではなかったのですが、こういうことは自然と噂が広がるし、こういう質問者も当然のように現れるものです。
そして聞かれた側は、時に恥ずかしげに、時に自慢げに自分たちの関係性を説明するものと誰もが思いますが、
「……付き合ってない」
「正確に言えば……、二週間前までは恋人関係でしたが、今はただの友人関係になりました」
二人が淡々と答えると、質問者は「あ……、そうなんだ。ごめんね」と罰が悪そうにして去っていきました。
そして残された二人は淡々と目を合わせ、蓮奈が口を開きます。
「ごめん、なさい」
「……別に。……茶化されるのは、私も嫌いだから……。……ただ……」
霧子は蓮奈に耳打ちします。
「……次からは……、キスしたくなっても家まで我慢して」
その言葉に、蓮奈は淡々と頬を染めました。
淡々とした二人『百合ぽい』 赤木入伽 @akagi-iruka
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