いつか巣立つその前に

勝利だギューちゃん

第1話

「ただ、今村良樹はずうとるびい」

「おかえ、リンゴ・スターはビートルズ」


お決まりの、挨拶をする。


「かあちゃん、のりがいいね」

「たまにはね。ところで、手洗いとうがい。それと、アルコール消毒」

「出かける前に、やっておいた」

「帰って来てからやりなさい」


息子は、しぶしぶ台所に行く。


5歳の息子は、育ち盛り。


ずうとるびぃを知ってるって、いくつなんだろう?

私も、人の事は言えないか・・・


「ねえ、母ちゃん」

「何よ」

「ビートルズが来日しいた時、失神した女子高生がいたんだよね」

「みたいね」

「その人たち、今いくつ?」


息子よ。

それは、言わない方がいい。

いいのだが・・・


「ママのママ、。つまり、あんたのおばあちゃんも、その中にいたから・・・」

「70歳くらい?」

「そうね。四捨五入したら、そうなるわね」


リモコンで、テレビをつけた。


「♪好きなんだ~好きなんだ~」

なつかしい、ずうとるびぃの映像が流れている。


「母ちゃん、あの人は・・・」

「笑点の赤い人よ

「面影ないね」

「人は、変わるのよ」


そう、人は変わる。

今は。私にべったりの息子も、やがて友達の方へと行く。

私や、旦那がそうだったように・・・


それでいいし、そうあるべきだと思う


こうしていられるのは、今だけ。

なら、今のうちに思い出を作っておこう。


少しでも、多く。


旦那は、娘をつれて散歩に出ている。

まだ、0歳の娘を・・・


旦那が帰ってきたら、相談しよう。

今度の旅行の行き先を・・・


「母ちゃん、コロナだぞ。自粛しないと」


直の事、家族でいられる今を大切にしたい。

私は、息子を抱き寄せた。

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いつか巣立つその前に 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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