第28話:「……七海ちゃんのこと、勘太郎もそう思ってるんだ」
「んん、やっぱり
ハンバーグを食べた後、
「なんで
「いや、別に悔しいわけじゃないけど、なんか
「なんだそりゃ」
意味わからん、とおれが首をかしげると同時、芽衣のスマホが一回震えた。
「げっ」
画面を確認した芽衣が声をあげる。
「どうした?」
「
そういいながらずいっとスマホをこちらに見せてくれた。
どれどれ……。
吉野夏織『メイちゃん、さっきはありがとう!助かっちゃった!』
吉野夏織『それで、本当はどうして一夏町にいたのー?』
「あらまあ……」
やっぱそこ聞かれちゃったか。まあ、そりゃそうだよな。さっきは
「ねえ
上目遣いで聞いてくる。可愛い。
「さあ……。ていうかさっき、そういうことなんも考えずに声かけてくれたのか」
「あの時は夏織ちゃんがピンチだったから、そんなこと考えてる暇なかったんだもん」
「そうですか……」
人のために
……とはいえ。
「学校からも逆だから
「そうなんだよね……」
「
「いるはいるけど、みんな
たしかに。保育園から幼稚園から高校、さらには小学生の頃に
「そっか……じゃあどうするか……」
おれが腕組みして首をかしげると、
「いや、でもその案は使えるよ?」
といいながら、おれと
「え、なんで? 一夏町に友達いないんだろ?」
「別に実際にいる必要はないでしょ。架空の友達がいるってことにして、『他校の一夏町に住んでる友達の家に行ってた』って言えばいいんだよ」
たしかに、それでいいのか……。
「イマジナリーフレンドか……」
「いや、それはちょっと意味が違うと思うけど……」
苦笑いを浮かべる芽衣が、そのあと少し心配そうな顔になる。
「ていうか、そんなに
「おれたちが一緒に住んでることか? 今のところバレてはなさそうだけど……」
「いや、それもそうだけど、
LINEのメッセージ窓に先程のイマジナリーフレンドの言い訳を打ち込みながら芽衣が「う、電池残量20%……」と、ぼやく。
「ああ、そっちか。ていうか、芽衣のおかげで思い出した。それ、
「七海ちゃんに聞こうとしてたことって?」
電池が少なくなってきたから打ち込むのをやめたらしい。スマホから顔を上げてこちらを見てきた。
「吉野にまだ、赤崎と付き合ってるって言ってないんだよ」
「え、うそ、付き合ってるの……?」
瞬時に青ざめる芽衣。
「いや、本当には付き合ってないけど」
「ば、ばか」
おれが普通に否定すると、青かった顔を今度は赤くしながら手をぶんぶんと振る。
「な、なんか、その言い方だとほんとに付き合ってるみたいじゃん! まじで最低なんだけど!」
「なんで最低だよ……。いや、赤崎的には3年生のその先輩とやらに彼氏がいると思い込ませればいいだけだろうから別に2年生に積極的に言わなくてもいいんじゃないかと思うんだけど、どうなんだろうなと思って」
おれは、何を赤崎に聞こうと思ってたかを説明する。
「ふーん……? でも、偽の彼氏ってそう言うことなんじゃないの? 周りみんなをだますっていうか」
「そうかもしれないけど、あんまり広まっても12月に別れた時に印象悪いだろ? 赤崎がおれを振ったってことになるだろうし」
「別れた時って……。『別れたように見せる時』ね?」
ジト目で修正されてしまった。
「なんでわざわざややこしい言い方にするんだよ」
「勘太郎がまぎらわしい言い方するからでしょ? そしてなんで勘太郎が振られたってことにならないといけないの?」
「いや、おれが赤崎みたいな美人を振るってありえないだろ、周りから見た時に」
「ふーん……」
芽衣がなぜか唇をとがらせる。おれが振られる形になってしまうのを心配してくれているのだろうか。いいやつだなあ、芽衣。
「……
「え?」
「なんでもない」
「ええ……」
……どうやら違ったらしい。まあいいや、とりあえず赤崎に連絡してみよう。と机に置いてあったスマホをいじる。
「……って、おいおい勘太郎くん」
「なに自分でつっこんでんの?」
スマホを持ってセルフツッコミをするおれを呆れたような目で見てくる。
「おれ、赤崎の連絡先知らないわ……。LINEも、電話番号も」
「え、そうなの?」
「うん……。なんで交換してないんだ……。芽衣、教えてくれない?」
おれが頼むと。
「……やだ」
じっとおれを見ながら芽衣が拒否した。
「え、なんで?」
「なんであたしがそんなことに協力しなきゃいけないの」
「吉野のことはあんなに
「それとこれとは話が全然違うでしょ!? 勘太郎、あたしに他の女の子の連絡先を教えろって言ってるんだよ? 分かってる?」
「いや、分かってるよ、そう言ってるよ」
「と、とにかく教えないから」
そう言って芽衣は立ち上がり、階段の方に向かった。
「ちょっと待てって」
おれはまた芽衣を
その時、そのまま進もうとした芽衣がくつ
「おおっ!?」
芽衣が危ないと思ったおれは反射的にもう一歩前に足を踏み出し、芽衣の方を右手で抱きとめる。
「うぁ……!」
どうにか転ばせないことには成功したが……。
「か、勘太郎……!」
「いや、あの……」
突然の至近距離に頬を
鼻の先同士が触れ合いそうな距離でなぜかかたまる二人。
その瞬間。
ブー、ブー、と芽衣が手に持っていたスマホが今度は小刻みに長く震え出した。
その体勢のまま、芽衣は画面を見て、バツが悪そうな顔をする。
「……ママから、電話」
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