第2話

あの後、神官のところへと向かい、許可をとりにいった。


「すみません、あの噂の神様に仕えたいんですが………」


「噂の神様……ですか。まさか、あの醜い神では?」


「はい、それです」


本当なら神官もぶん殴りたいほど苛ついたが、なんとか気持ちを抑えた。

でも、まさか神官もそういうとは思っても見なかった。


「そうですね、偽聖女には醜い神がお似合いでしょう。構いませんよ」


ーーーあとで、はったおすぞ


「ありがとうございます。ですが、そんなに軽々しくいいのですか?」


そもそも神に仕える者はちゃんといろんな手順を踏んでから、決まるはずだ。

それなのに、こんなたった一言で許されるとは思っても見なかったのだ。


「…ふっ…あんな神に仕える者などおりませんよ。いつもたった一日で終わるんですから。あぁ、あと、醜い神様はここを右に曲がって真っ直ぐ行くと会えますよ」


あざ笑うかのようにふっと笑うと、その場から神官は去っていってしまった。

後ろ姿を見ながら、怒りを抑えるのも、もうしばらく限界だ。


「まさかこんなに簡単にいいとは……」


あっさりだったので、拍子抜けしながら、その神様の元へと向かった。

確かに右へ曲がり、そのまま真っ直ぐ行くと神様がいるドアについた。

神様がいる部屋はドアがなんだか豪華なものですぐわかる。


「失礼します」


きーんっと鈍い音をたてながらドアは開いていく。

ホコリが湧き出ながらも、その部屋へと入っていった。

そして、そこには人影が見えたのだ。


「誰ですか」


真っ黒な髪、白く濁った瞳。顔にはほぼ全体を覆う醜いあざがあり、部屋もホコリまみれでずっと掃除されていないようだ。

しかもこれまた美少年ときた。


「はぁ…?何が醜いよ……」


思わずそれに絶賛してしまい、ぽつりと呟いてしまった。

そして、段々と怒りが湧いてきた。


「醜い神様って全然醜くないし!!そもそも、あいつらの心の方が醜いわ!!」


「へ?」


神様は私の発言にびっくりしたのか、拍子抜けた間抜けな表情をした。


「あ、すみません。私はレナ・アリオード。本日から神様のお世話をさせていただきます」


律儀にお辞儀をしながら、挨拶をした。それは普通なことなのに、神様はまたびっくりした表情でこちらを見る。


「僕が怖くないんですか?」


「冗談もほどほどにしてくださいよ。普通に綺麗じゃないですか」


「………僕は、元はちゃんとした神様でした。けど、呪いにかかってしまい、僕は神様と呼ばれる筋合いはありません」


「あ、そうなんですか。それで?」


「それで……とは?」


「いやいや、呪いにかかったんですよね」


「はい」


「神様の資格がないんですよね?」


「はい」


「呪いにかかって神様の資格がなくなる訳ないじゃないですか。私は、そうやって醜いという人の方が醜いと思いますよ」


別に呪いがなんだ。そりゃあ悪いことをしてこうなったっていうなら自業自得だとは思うけれど、ただの呪いじゃないか。

緊張して損した気分だ。


「そうですか……」


神様はなんとも言えない表情をしていた。

私はとりあえず部屋を見渡し、部屋の汚さに耐えられなかったので、掃除道具を持ってくることにした。


「あ、待っててくださいね。すぐ戻るので!!」


そして、部屋からでていった。

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醜い神と呼ばれた本物の神様と捨てられた聖女〜捨てられたので神様とともに幸せになります さくらもち @mika0905

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