第60話 3度目の校舎裏

 放課後。授業が終わったのでアルバイト先へ向かおうとしていた俺は、駐輪場から校舎裏にやって来た。


 そこには、今日転校してきたばかりの神本さんという女子生徒と俺の2人だけだ。ここに一緒に来たけれど、特に会話もせず歩いてきた。


 彼女とは、今朝初めて出会った。迷子だったようなので学校まで案内をしただけ。関係はそれぐらいで、それから仲良くなった訳でもない。同じクラスメイト、という顔見知りの知り合い程度。そんな彼女と2人だけ、というのは気まずかった。


 少しずつ夏が近づいているようで、日陰になっている校舎裏でも立っているだけで暑かった。アルバイトの時間も迫ってきているから、早く話を終わらせたい。


「それで、話って?」

「あの、その……」


 話を促してみたけれど、神本さんは俺から視線を外して手足をソワソワと動かし、モジモジしていた。なかなか本題に入ってくれない。


 そんな彼女の様子を見て、俺の脳裏に”告白”という文字が浮かんだ。けれどすぐに否定する。だって彼女は、俺の素顔を一度も見たことがないんだから。その他、俺に恋するような要素は無いはず。


 だとしたら、他に思い当たるような用件は無いな。一体、話したいこととは何なのだろうか。先程からずっと考えているが、答えは出ない。


「……」

「あの、えっと……」


 促してみてダメだった。なので彼女が話し出すまで、しばらく辛抱する。


 アルバイト先よりも、学校の人間関係の方が大事だ。アルバイトはクビになったとしても、また別のアルバイト先を探せば良いから。学校は、転校するのが大変だし。なるべく、学校では問題を起こさないように注意したい。今も、なるべくなら彼女に嫌われないように立ち回って、穏便に事態を収めたいと考えていた。


 もしかしたら彼女に嫌われて変な噂を流されて、それが全校に巡って面倒なことに巻き込まれるかもしれない。最悪な状況まで想定して、彼女の話に付き合っている。


「あの!」

「はい、何ですか?」


 何かを決意して、神本さんが顔を上げて俺と目線を合わせてきた。ようやく、何か話してくれるのか。彼女の視線を見返す。さて、なんと言われるのかな。




「貴方の事が好きになりました! 私と、付き合って下さい」

「は?」


 返ってきたのは、予想していたけれど即否定した考え。だから想定外な神本さんの言葉に、俺の口から無意識に声が漏れ出ていた。


 いやいや、そんな馬鹿な。彼女は、俺のどこに惚れたというのか。



***



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【未完】仮面の学生~超ブサイクだった俺は、ある朝目覚めると超美形になっていた~ キョウキョウ @kyoukyou

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