第55話 電車と徒歩通学
桜場家で相談を受けてもらったり食事を御馳走になったり、色々とお世話になった日の翌日。
今朝も学校に行かないといけないが、昨日は乗っていった自転車を学校の駐輪場に置いたまま家に帰ってきた。なので今日は、電車に乗って学校に行く必要があった。いつも家を出る時間に出発すると、かなり早く学校へ到着してしまう。
ということで俺は学校の最寄駅から数駅前で電車を降りて、そこからは徒歩で行くことにした。
電車に乗っていくと10分はかからないような距離を、40分ぐらい歩いて学校に向かう。そうすれば、いつもの時間ピッタリに到着できるだろうと考えた。電車では素顔で、降りたら仮面を被るというタイミングも確保できるだろうから。学校近くの駅で仮面を被ると、通学時間で学校の生徒に見られる危険があるから。
もう、仮面を外して学校に行っても良いような気もする。だが、まだ仮面は外さず過ごそうと思っていた。いつか、この仮面が必要無いと感じる丁度よいタイミングが訪れるはず。その時に仮面を外せば良い。それまでは、学校で仮面を被っていようと俺は考えていた。
相変わらず注目を浴びる駅のホーム、車内での居心地が悪い雰囲気を突破して目的の駅に到着。学校の最寄駅から数駅前で、俺は電車から降りた。改札を抜けてから、外に出ると仮面を被る。これで素顔は隠せた。
「ふぅ」
朝から疲れた。やはり、電車ではなく自転車通学の方が性に合っていると思った。そして俺は、駅から学校へ向かうウォーキングを始める。いつもなら、電車で素早く走り抜けていく景色が歩いているとじっくりと見えた。
もうそろそろ、夏が始まりそうだった。夏休みに入る前には、期末テストもある。勉強しないといけない。アルバイトの時間を調節してもらわないと。夏休みに入れば部活をしていないので、シフトに入れる時間が確保できる。それを交渉材料として、店長との話し合いが必要だ。
テクテクと、歩道を歩く。
ここの川、意外とキレイだな。橋の上から魚の影が見える。堤防に釣り竿を持ったおじさんが歩いていた。平日の朝から楽しそうだな。
ここの和菓子屋、自転車で前を通った時にいつも気になっていた。今の時間だと、お店が開いてないから中に入って商品を買ったり出来なかった。朝10時に開店するようだ。買いに来るなら、休日じゃないとダメか。値段も高そうだと思っていたが、意外とお手頃だった。店先に貼ってある商品の写真と価格を見て、今度ちょっと来てみようかと思った。
たまには、こうやって街を徒歩で移動するのも良いな。色々なことを考えながら、歩いていた。すると。
「キャッ!?」
「うわっ、っと」
通りの角から急に女の子が飛び出してきた。避けきれない。
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