第53話 私の望んだ答え
医者である楓美さんの力では、祐一の問題を解決することは出来なかった。だが、彼の心を軽くしたようだ。この前のデートの時に見せてくれた表情に比べて、今日のほうが明るく楽しそうな気がする。
祐一の問題を解決するためには、どうするべきだろう。他の可能性について、皆で色々と話し合ってみた。私は、インターネットで調べてきた情報について皆に話して共有してみた。その他にも、オカルトの可能性を提案してみる楓美さん。
あーでもないこーでもないと話し合った結果、神社やお寺などでお祓いしてもらうというのはどうか、という結論に至った。正しい解決方法が分からないから、何でも試してみる必要があるのかもしれない。
そして話題は、問題が解決した場合にどうしたいのかについて。最終的に、祐一が何を求めているのか本音を聞き出そうと美卯が質問する。
それは私も、彼がどう答えるのか知りたいと思うような疑問だった。前まで彼は、元の顔に戻るしかないとネガティブに信じ切っていた。元に戻った場合のことだけを考えて、仮面を被って学校に通っていた。
以前の顔を知っている人たちが多い学校では、絶対に仮面を外そうとしなかった。それは、いつか元のブサイクな顔に戻った時の事を考えて。ある朝、自分の顔が別人のように変わっていた、ということを誰にも知られず隠しきろうと考えていたから。ブサイクな顔に戻った時に仮面を外して、しれっと元に戻すつもりだったようだ。
いつ、元の顔に戻るのかどうか分からない。ずっとこのまま、という可能性もあると思うが、祐一は頑なに否定した。前の顔に戻った時、悲惨なことにならないように自分に言い聞かせているかのようだった。
そんな彼が、どう答えるのだろうか。
「でも、それで顔が変わった原因が判明したとして、どうするつもり?」
「それは……。やっぱり今のままずっと、この顔で過ごせたら良いなって」
美卯に問い詰められて、祐一は困ったような表情を浮かべながら答えていた。私は彼の答えを聞いて、とても嬉しくなった。
「うん! 私も、それが良いと思うよ」
口に出して、良いと言う。以前なら、解決方法なんて見つかるはずないと否定的な意見ばかり言っていた祐一。彼は、絶対に元の顔に戻るだろうと信じ切っていた。
けれど今日は、前向きな事を言っている。今のカッコいい顔でずっと過ごせたなら良いと言ってくれた。彼がそう言ったことが、本当に嬉しかった。
今のように、少しでも前向きに生きて欲しいと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます