第52話 手助けの不安
祐一と美卯の2人を引き合わせる事ができた。さらに、その日のうちに美卯の家にお邪魔して、姉の楓美さんとも顔を繋ぐことに成功した。これで私は自分の役目を、ちゃんと果たせたと思う。とてもスムーズに、彼の役に立てたはずだ。
自分一人では限界だったが、他の人達なら何か見つけてくれるかもしれない。私も期待しながら、問題の解決に挑む。
祐一は楓美さんに、詳しい事情について説明している。彼女は、真剣な表情で話を聞いていた。
美卯たちも一緒に、彼の話を聞いている。私は既に、何度か聞いたことのある話。祐一が話し終わると、私達の目の前で楓美さんが彼の診察を始めるようだった。
「ちょっと、近くで顔を見せてくれるかな」
「はい。お願いします」
楓美さんは席から立ち上がって、祐一の座っているイスの近くまで移動した。
「あ、座ってて。顔に、触れても大丈夫かな?」
「どうぞ」
彼の目の前に立った楓美さん。事前に、顔に触っても良いかどうかを確認すると、大丈夫だと頷いて顔に触れる許可を出す祐一。
2人の顔のある位置が、近すぎではないか。ふとしたはずみで、肌が触れ合ったりキスしてしまうのでは。そう思って口から出そうになった言葉を、グッと堪える。
あれは、ただの診察なんだから。医者として病気や症状などを判断するためには、目を凝らして彼の身体を隅々までチェックする必要があるんだ。欲望に満ちたような行為ではない。
美男美女である、祐一と楓美さん。傍から見ると、とてもお似合いのように感じる2人だった。自分だけ部外者にされたような、そんな疎外感を覚える。
胸にあるモヤモヤとした気持ちはしまい込んで、今は口を閉じて見守るだけ。私が今、手伝えることは何もないから。
楓美さんに診てもらったけれど、何も分からないまま。だが、祐一の表情に変化は無かった。彼は落ち込んだりしていないようで、私は安心する。
だけど、不安に思う気持ちが増した。
私が祐一のために動いて主に役に立ったことは、美卯と引き合わせたことぐらい。本当に手助けして彼の役に立っているのは、楓美さんと美卯の2人だと私は思った。
私の貢献度は低い。桜場家に来てからは、静かに見守っているだけだったから。
この場に、私って必要な存在なのだろうか。そんな事を考えてしまった。しかし、表情に不安そうな様子を出さないよう、必死に抑える。
この前も、それで祐一に余計な心配をさせてしまったから。私は少し離れた席で、静かに見守ることしか出来ない。だから、不安だった。
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