第49話 衝撃的な対面

「……ッ! お前は」

「どうも。中井祐一です」


 ライバルと思っていた相手が目の前でペコっと頭を下げて、挨拶していた。存在は知っていたけれど、対面するのは初めてだった。予想していなかった展開に、身体が勝手に後ずさりしている。私は、無意識にその場から逃げ出そうとしていた。


「なんで、コイツがココにいる? 何が目的だ?」


 なぜ私は、ここに連れてこられたのか。親しそうに話していたようだけど、華梨とどういう関係なのか。疑問がいっぱいあった。


「この前、相談したいことがあるって言ってたの覚えてる?」

「ん? あぁ。確か、姉さんに友達のことで聞きたい事があるって。……コイツが、その友達?」

「そう」


 華梨の説明を聞く。知り合いとは、コイツのことだったのか。予想外過ぎて、私は唖然としてしまった。ということは、これから私が手助けする相手とは……。


「は? なんで、私がコイツの!」

「あれ? 祐一のこと嫌いなの?」


 ライバルの手助けをするなんて、嫌だと思った。だけど、そんな事を思っていると分からないのも当然だろう。私の彼に対する因縁を知らないから。1位を目指して、コイツを倒すために必死で勉強してきたことを、華梨に話したことが無かったから。


 というか、気になったことが1つある。華梨が奴の名前を呼んだこと。いつの間に2人は、そんなに親しくなったのか。私が彼について調査をしていた頃、全く関係は無かったはず。なのに今、私の目の前で親しそうに話していた。


 私の見ていないところで、ライバルだと思っていた奴と友人が親しくなってる!?


「お、おい。ゆ、祐一、ってコイツのこと下の名前で呼んでんのか」

「うん、そうだよ。って、待って。もしかして、美卯は彼の名前を知ってた……?」

「クウッ……」


 思わぬ反撃をされて、私は怯む。変な声も出してしまった。関係を解き明かそうと聞いてみたら、逆に私が、彼に対してライバル視していることがバレてしまう。


「ねぇ、なんで?」

「な、なにが……」

「なんで彼の下の名前、知ってたの?」

「う……」


 ヤバイ。華梨に追求されてしまう。テストの順位で密かに奴と競っていることを、バレたくないけれど無理そうだ。白状しないといけない雰囲気。友人なのに隠し事をしていたことについても、謝る必要があるのかもしれない。


「ッ! ……テスト結果の順位表で名前を見てたんだよ」

「テスト? 順位表?」

「そう。コイツが毎回、私の上にランクインするから。めちゃくちゃ嫌な記憶として残ってたんだよ」

「へぇ。そうだったの」


 正直にライバル視していたことを打ち明けると、彼女は納得の表情だった。私は、とりあえず一安心する。そして、ちょっと精神が落ち着いてきた。


 改めて私は、2人の関係についてを探ることにする。親しそうにしていたのは何故なのか。いつから、そんなに仲良さそうになったのか。


「それで?」

「え?」

「どうして、コイツと仲良くなってんだ?」

「あー、えっと。実は、その事が今回の相談と関係していて……」

「は? どういうことだ」


 身体に問題を抱えている、と言っていたのを覚えている。奴を見てみるが、普通に健康そうだけど。病気を患っているという話も聞いたことがない。何か、問題があるのか。


 疑問に思っていると、奴が被っている仮面を叩いて何やら意味深なジェスチャーをした。あの妙に変な仮面に何か、問題があるというのか?


「うん、そうだね祐一。彼女に一回、見せてもらえるかな」

「あぁ。分かった」

「あ? 何だ?」


 2人は言葉も交わさず通じ合って、何か行うことを決めたようだ。これから私は、何を見せられるというのか。構えていたら、奴が動いて仮面に手を伸ばした。


 仮面を、外すだけ? そう思って、警戒しながら奴の動きに視線を向けていた。


「は?」


 再び、予想外の出来事。以前見た、あのブサイクな顔が現れるかと思っていたら、全然違った顔が出てきてビックリした。超イケメンの登場に驚きすぎて、パッカリと口を開いていることにも気付かずに、私は奴の顔を凝視し続けた。なんだこれ。

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