第48話 友達からの相談

「美卯ちゃん。聞きたい事と、相談したいことがあるんだけど、ちょっといい?」

「ん? どうした、華梨」


 昼休みの時間。珍しく隣のクラスからやって来て、話しかけてきたのは皆瀬華梨。家が近所で、小さい頃からの友達だ。


 彼女が控えめな態度で相談したい事がある言ってきた。普段は明るい彼女にしてはとても珍しい様子。何か、やってしまったのか。聞きたい事、相談したい事とは一体何なのかを考えてみたが、思い当たるようなことはない。華梨の言葉に耳を傾ける。


「美卯ちゃんのお姉さんって、医療系のお仕事に携わってたよね」

「え? あぁ、そうだな」


 いきなり姉さんの話で驚きつつ、そうだと頷いた。それが聞きたい事、なのかな。相談したい事に関係するようだが。


「実は、誰に相談すればいいのか分からないんだけど、身体に問題を抱えている人がいて、相談に乗って欲しいの」

「もしかして、どこか身体が悪いのか?」

「あ、いや。私じゃなくて、友だちの話なんだけど」


 華梨があまりにも深刻そうな顔で問題を抱えていると告げるので、びっくりした。しかし、相談したいこ事とは結局、何なのか。身体に抱えた問題とは、一体何なのか不明なまま。その問題については、詳しく説明してくれないのか。


「その、ごめん。具体的には、どんな感じなのか今は話せないだけど……。いつか、相談に乗って欲しいってお姉さんに伝えておいてほしいの」

「うーん。よく分からないけれど、華梨の知り合いで、身体の問題で相談したいことがある、ということだな。わかった、姉さんに伝えておくよ」

「ありがとう、美卯ちゃん!」


 美卯が真剣な表情で、お願いしてきた。彼女にとって、よっぽど大切な知り合いの問題らしい。一体誰なのか気になったが、今はあまり詮索しないほうが良いだろう。


 家に帰ってから、ちゃんと姉さんに華梨の言葉を伝えた。


「うん、わかった! 何かあったら遠慮なく相談に来て頂戴、って伝えておいて」


 私も事情をよく分かってないまま伝えたから、姉さんはもっと分からなかったはずなのに、遠慮せず相談に来いと受け入れ体制はバッチリだった。




 それから、しばらく経って。授業が終わり、私は教室で帰り支度をしていた頃。


 ポケットに入れていたスマートフォンが震えた。誰が送ってきたメッセージなのか確認するために、ボケットから取り出して見た。送ってきた相手は華梨だった。


 彼女は、どこにいるのか教えてくれ、というメッセージを送ってきた。私が今居る場所は、教室だと返答する。


 どうしたのだろうか、と思っていると華梨がすぐに教室へ入ってきた。うっすらと額に汗を流すほど急いで来たらしい。


「美卯ちゃん。この後って、何か用事はある!?」

「うおっ!? き、今日? いや、特に用事とかは無いが」

「それじゃあ、ちょっと来て!」

「えっ? お、おい。どこに連れて行くんだ」


 彼女の勢いに驚きながら、予定が無いことを伝えた。すると、問答無用で私は腕を掴まれて引っ張られていく。




 校舎を出て、人の居ないような場所まで連れてこられた。肌寒い。


「オイ。一体、どこに連れて行く気だ華梨!」

「お待たせ」

「ん? 誰か居るのか」


 ようやく立ち止まったのは、建物の影になっているような場所。誰も居ないような所へ連れてこられた。華梨は私の質問に答えず、別の誰かに話しかけていた。そこに誰か居るのか。


「えっ?」


 華梨が話しかけた視線の先に目を向けてみると、ライバルである彼が壁を背にして立っていた。その姿を目にした瞬間、小さな声が漏れ出た。

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