第42話 その他の可能性

「医学で分からなかったから、あとはオカルトとか?」

「話を聞いていると、どちらかというとそっち系かなと思うな」


 オカルトか。そういう可能性もあり得るのか。確かに、一晩寝て起きたら別人の顔に変わっていた、というのは超常現象のような気がする。そうすると、ますます原因やら解決する方法は分からないだろうな。


「今までずっと霊が憑依していて、別人の顔に見えていた。それが成仏したから今の顔になったとか」

「楓美さんは、意外とそういうのを信じるタイプなんですね」

「考えられる可能性の1つとしてね」


 色々な可能性を挙げる楓美さん。何だか、あるかもしれないと思わせるような話。この世に、霊が存在するのかどうは分からないけど。


「俺は小さいときから、酷い顔って言われていたように思います」


 2歳か3歳の頃にはもう、家族に顔をイジられていたような記憶がある。その時はまだマシな方だった。それから、どんどん扱いが酷くなっていって拒絶されるようになった。そして今は別居。家族と別の家に分かれて、それぞれで生活している。


 流石に、そんな俺の事情を彼女たちに話す必要は無いか。


「例えば、お祓いをしている神社やお寺に相談しに行ってみるとか?」

「そういうのも、アリかもしれないね」


 ソレも、俺が今まで考えたこともなかったアプローチだった。自分ひとりだけでは、考えつかなかったようなアイデア。ありがたい事だ。


「でも、それで顔が変わった原因が判明したとして、どうするつもり?」

「それは……。やっぱり今のままずっと、この顔で過ごせたら良いなって」


 美卯さんに問い詰められて、俺は考える。どうしたいのか。今までなら、元の顔に戻った時のことしか考えてこなかった。でも今は少し希望を持てるような気がする。このまま、この顔で生きていきたいと思えた。そんな俺の本音を、打ち明ける。


「うん! 私も、それが良いと思うよ」


 俺の答え聞いて、何故か華梨が喜んでいた。まぁ彼女は、この顔が好きらしいのでずっとこのままで居たいと答えたから、嬉しかったのかな。


「まだ、調べてみる必要がありそうな事が沢山あった」


 医者にお願いして診てもらったけれど、分からないと答えられた。その時、原因は一生分からないままなんだろうと思った。けど実は、まだまだ調べられそうな手段がいくつもあった。


 原因を究明しようとするのならば、諦めるのは早かったようだ。


「うん。また、ちょっと希望が見えてきたよ」

「よかった」


 華梨に手助けしてもらって、色々と知ることが出来た。原因については、まだ何も分からないまま。だけど、少しだけ前向きになれたような気がした。

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