第41話 原因は何か

 顔に異常は見当たらなかった。それじゃあ他に何か、考えられるような原因はあるだろうか。華梨たちが皆で、話し合ってくれていた。


「実は、元からその顔だったという可能性とかは?」


 俺の顔が一晩で変わったという事を信じられないのか、楓美さんが仮説を立てる。もともと、この超美形な顔だったという可能性。


「でも私は、祐一の以前の顔を見たことがあるよ」

「私も、彼の顔が酷いのは噂話を聞いてよく知ってた。学校で何度かすれ違った事もあって、その時にチラッと見たこともあるかな」


 この場にいる人たちの中で、以前の俺の酷い顔について美卯さんと華梨の2人は、知っているはず。


 お姉さんと、お母さんの2人は今日初めて出会ったばかりなので、俺の以前の酷い顔については知らないだろう。


「写真とか、以前の顔が確認できるモノは? 何か無いかな?」

「実は全部、処分しています。俺の顔が写っているような写真は、1枚も無いです。自分の顔を撮った写真や映像も、一切残したくなかった。なので、自分の家に写真の1枚も残ってないんです。俺が通っていた小学校か中学校の卒業アルバムを持ってる人を探せば、写真も見つかるとは思うけど」


 顔が嫌だからという理由もあるけれど、家族も俺の記録を一切残そうとしなかったから。


 学校の行事で撮影されて販売された写真も一切買わなかったし、家族写真を一度も撮ったことがない。だから当然のように、写真などは残っていなかった。


「学校に通っていた人たちだけ、彼の顔がブサイクなように見えていた、とか?」

「集団心理ね。無意識のうちに皆の祐一君に対するイメージが”顔がブサイクな人”に固定されてしまったから、皆が彼のことをブサイクだと思うようになった」

「でも、学校だけじゃなくアルバイト先とか電車に乗るときとかもにも、不快そうな視線を向けられたことがあります」

「それって、もしかして勘違いだった、ってことはないよね?」

「あ」


 よく考えると、面と向かってブサイクだと言われたことは無いかもしれない。ただ不快そうな視線を向けられているだけだった。


 まぁでも普通は、面と向かってブサイクだなんて言わないだろうから。


 いやでも、家族から別居されて、縁を切られるほど嫌われる原因になったのは顔。アルバイト先で、理不尽なクビの切られ方をしたのも顔が原因のはず。そうじゃないとしたら、なぜ俺の人生はこんなにも辛いのか。


「ソレについては、まだ分からないわね。とりあえず、その可能性は保留かな」

「そうだね。他にも、色々と可能性がありそうなことが沢山あるから」


 俺が色々と考えていると、そんな俺の表情を見て察したのだろうか。皆が、とても優しくしてくれた。それとなく話題も変えてくれる。今日が初対面なのに楓美さんに気を遣わせてしまったようで、申し訳なく思った。

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