第39話 お姉さんの帰宅
「ただいまー」
桜場家のリビングにあるテーブルに座って待っていると、玄関の方から元気そうな女性の声が聞こえてきた。お姉さんが帰ってきたのかな。
「美卯! 帰ってきたよ!」
「リビングに居る! こっちで待ってるよ」
上の階へ呼びかけるような玄関からの大声。美卯さんの名が呼ばれたので、彼女は座っていたイスから立ち上がってリビングの扉をガチャっと空けると、上半身だけを廊下に出して返事していた。
「ごめんごめん。待たせたかな?」
扉の向こうから、ペコペコと頭を下げて謝りながら入ってきた若い女性。彼女が、美卯さんのお姉さんなのだろう。
美卯さんと顔のよく似た姉妹のようで、メガネは掛けていないけれど知的な雰囲気のある女性だった。髪型も違った。ロングヘアの美卯さんに対して、ショートヘアのお姉さん。ムスッとした表情と妹と、ニコニコとして楽しそうな表情をしている姉。よく見てみると、違った性質を持った姉妹のようだ。
「君が相談したい事がある、って学生かな。いやー、待たせちゃってごめんね」
「いえ、俺は大丈夫ですよ」
「
「中井祐一です。よろしくお願いします」
テーブルを挟んだ俺の対面にある席に座ってニコニコと笑顔を浮かべるお姉さんは、さっそく自己紹介を終えると会話を始めた。
「それで、まだちょっと詳しい事情が分かってないんだけど。説明してくれる?」
「あ、はい」
なんとなく、彼女になら話しても大丈夫そうだと感じられた。医者だと聞いていたからなのかな。そういうムードがある。そして俺は、彼女を信じて話してみた。
以前、この顔がとても酷かったこと。ある朝、目が覚めると別人のように超美形な顔に変化していた、という出来事について。
この話をするのは、もう3度目ぐらいだろう。何度か繰り返し話しているうちに、慣れてきたようだ。話す内容も、まとまってきたように思う。ウンウンと頷きながらちゃんと話を聞いてくれている楓美さん。とても話しやすかった。
「「「「「うーん」」」」」
話し終えた後、その場に居た皆が微妙そうな表情を浮かべて唸っていた。お姉さんだけでなく、美卯さんの母親も一緒に話を聞いてもらった。だが、なんとも言えないという感じだ。一度話をした華梨や美卯さんも、改めて聞いたのに顔を曇らせる。
やっぱり、信じられないような胡散臭い話だからなぁ。何度も話して周りの反応を見ていると、本当に起こった出来事なのだろうかと、自分も疑わしくなってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます