第22話 気軽な告白

 バナナジュースを飲み終わって、さて次は何をするのだろうか。女性とのデートについて詳しくない俺は、何をするべきなのか分からなかった。定番なのは映画とか、遊園地に行くとか。しかし、もう少しで夜になってしまう。遅い時間まで外を出歩くのは良くないだろう。ということは、今日のデートはここで解散するのかな。


「ねぇ」

「ん? どうした」


 何をするのだろうか考えていると、隣りに座っている華梨が話しかけてきた。次の予定にてついて聞かせてくれるのかな。


「祐一は彼女、居ないんだよね」

「居ない」


 予想していた話とは違った。さっきも話した彼女について、もう一度確認される。まだ何か言いそうな雰囲気の華梨。


「じゃ、じゃあさ。私と付き合うとか、どう?」

「……」


 彼女は、そんな提案をしてきた。俺と華梨が恋人関係になる。俺がどう答えるか、彼女は期待するような視線を向けてくる。


「ダメかな?」

「申し訳ないけど、付き合えない」


 もう一度、華梨は俺の答えを求めてくる。そんな彼女に、俺はキッパリと断った。恋人関係にはなれない、と。


「どうして?」

「まだ、そんなに話したことも無いし、お互いのことを知らないのに無理だよ」

「付き合ってから、知り合っていけばいいじゃん。それじゃ、ダメなの?」

「……」


 正直に白状すると、俺と華梨は性格が合うような気がした。ただ、まだ付き合いの時間は短くて判断は出来ないが、一緒に過ごせば仲良くなれると思う。


 だけど俺は、お互いの事を知らないから、という理由で断った。だが、そんな理由では納得してくれない華梨に、本音で答えることにした。


「華梨は、この顔が好きになったから、付き合いたいって思ってるだけだろう?」

「……」


 彼女が、俺の顔を気に入った事は分かった。それで付き合いたい、ということも。華梨を責めているわけじゃない。俺も、出来ることなら美人な女性と付き合いたいと思っている。華梨のように、ギャルっぽいけど幼い部分があって、可愛らしい女性と恋人になりたいと思う。


 俺と華梨が恋人になれば、お互いに好きになれる可能性は高いと思う。


 けれど、大きな問題がある。この顔は俺の本当の顔じゃない、ということ。いつの日か、俺は元のブサイク顔に戻るかもしれないという懸念を抱いている。


「いつ、また俺の顔が元に戻るか分からない。でも、顔がブサイクに戻った時、絶対に別れることになると、俺は思う。好きになった理由が、この顔だからね」


 いつ爆発するか分からない爆弾。爆発してしまったら、お互いに大きな被害を被ることになる。それは避けなければ、ならないだろう。


「一度、恋人になって別れることになるのなら、最初から付き合わないほうがいいと思う。だから華梨の告白を断った。すまない」

「……」


 華梨は付き合いたいと言ってくれたが、だからこそキッパリと断る。ずっと黙ったまま俯く彼女。楽しかった時間が、一瞬で居心地が悪くなる。ものすごく気まずい。言葉を、間違えてしまったかも知れない。だが、判断は間違えていないはずだ。


「ウゥゥッッッ」


 とうとう彼女は泣き出してしまった。厳しくストレートに言い過ぎてしまったか。どうにかして、彼女に泣き止んでもらわないと。


 彼女が嫌いというわけではないし、泣かせたいわけでもなかった。これから仲良くしていきたいとは思っている。その気持を、俺は華梨に伝えるべきだろうな。


「恋人にはなれないけど、俺たちは友だちになれると思う。どうかな?」

「……うん。私も、仲良くしたい」

「この顔の秘密を誰にも話さないように、俺は華梨を見張っておく。その間だけは、仲良くしよう」

「……わかった」


 どうにか彼女を説得して、泣き止んでもらった。


 仮面の下の素顔について口止めするために、交換条件として華梨とデートをした。今後も、彼女が誰かに話さないように見張っておく必要がある。そんな事はしないと思うが、念の為に。そういう建前で、彼女と一緒に居ることが出来る。


 友達関係なら、俺が元のブサイク顔に戻ったとしても、恋人関係よりかダメージは少ないだろう。だから、その日まで華梨とは仲良くしていきたい。




 その日は、少し気まずくなりながらデートを終えた。これから、俺たち2人は友達として仲良くしていこう、と約束をしてから別れた。

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