第21話 放課後デート4
バナナジュースの専門店に到着して、俺たちは店内に入った。店の中には俺たちと同じ年頃の、他校の制服を着ている男女で賑わっていた。甘い匂いが漂っている。
「流行ってるんだな」
「そうだねぇ」
かわいいサルのイラストと、バナナの絵が描かれたカウンター。購入して店の中で飲めるようにテーブルも設置されているが、少し狭くて人も多いのでテイクアウトで外に行ったほうが良さそうだ。
列になっていたので、順番に並ぶ。カウンターに掲げてある、大きなメニューから
どれを飲もうか決める。
「私はチョコチップの入ってる、バナナジュースにしようかな」
「じゃあ俺は、濃厚バナナジュースにする」
メニューの中では、一番オーソドックスと思われる物を選んだ。これで、専門店のバナナジュースがどんなものか確かめてみる。
自分たちの番が回ってきたので、決めていた商品を注文をする。
「チョコチップのバナナジュースを1つ、濃厚バナナジュースを1つ。注文は以上でお願いします。支払いは一緒で」
「かしこまりました」
華梨の分も一緒に、さっさと注文を終える。店員に伝えて、支払いを済ませようとした。だが、横に立っていた華梨が待ってと言う。
「え! いいよ、自分の分は自分で払うから」
「いいって。ジュース代ぐらいは払うよ」
「そ、そう? じゃあ、ありがとう」
1杯600円程度だから、奢ると言っても大したことはない金額だ。ということで支払いを済ませて、商品を受け取った。用事も済んだので、すぐに店内から出る。
買ったジュースは、どこで飲もうかな。座って落ち着ける場所を探さないと。この近くにあるかな。
「あそこにベンチがあるよ。あそこで座って飲もうよ」
「そうだな」
落ち着ける場所を探そうとしたら、華梨が指差した先には設置されているベンチがあった。ということで、近くにあったベンチに並んで座って飲むことに。
「はい」
「ありがとう」
袋の中からチョコチップのバナナジュースを取り出し、華梨に渡す。彼女は両手でプラスチックのカップを受け取った。俺も、濃厚バナナジュースを手に持つ。
「どう?」
「ん。美味しいな」
俺がストローでバナナジュースを飲むと、華梨は期待した目で感想を求めてきた。普通に美味しい。そのままのバナナっぽい味に、自然な甘さがある。さすが専門店で売っているだけある。紙パックで売っているようなフルーツジュースとは、一味違うことは明確に分かった。
「そっちは、どう?」
「うん。美味しいよ」
チョコチップ入りも、かなり美味しそうだと思っていた。まずは基本から、飲んでみようと思った。だけど、そっちの選択でも良さそうだったかな。少しばかり後悔。
「ちょっと、飲んでみる?」
「うぇっ!?」
俺がジーッと見つめていたから、飲んでみたいという気持ちがバレていたようだ。しかし、それは間接キスというやつではないのか。
「いいのか?」
「うん。奢ってもらったからね。こっちも美味しいよ」
華梨は、俺の方にストローを差し出す。本人からの許可も貰ったので、思い切って飲んでみた。差し出されたストローに軽く触れて、吸う。
「どう? 美味しい?」
「あぁ、うん。チョコのやつも美味いな」
「良かった」
華梨の飲んでいたバナナジュースはチョコの甘さが加わって、また違った美味さがあった。美味しいと伝えると、彼女は嬉しそうに笑った。
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