第7話 アルバイトの面接結果

「履歴書、見せてくれる?」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 俺は、ファミレスのアルバイト面接に来ていた。面接担当の中年男性に案内されてスタッフルームに入った。カバンから履歴書を取り出し、渡す。確認が終わるまで、俺はイスに座って黙ったまま膝の上に手を置き姿勢を正して、行儀よく待っていた。


 1分もしないうちに履歴書から顔を上げ、俺の顔をジロジロと見てきた面接担当の男性。今は、仮面を外した素顔である。半日以上、顔を隠していたからなのだろうか逆に素顔を晒していることに違和感があった。


「じゃあ明日から、シフトに入ってくれる?」

「え、もう!? ほ、本当ですか?」

「うんうん。もちろん」


 あっさりと採用が決まった。こんなにもスムーズに決まったのは初めての経験だ。今まで俺が受けたアルバイト面接では、1時間以上も経歴や特技について質問と回答を繰り返す、長時間の話し合いがあった。


 だが今日は、そんな会話もなく簡単に決まった。


 面接が始まってから、まだ1分少々しか経っていない。俺は怪訝な表情をしていたのだろう、面接担当の男性が不安そうな表情で問いかけてきた。


「あ、もしかして時給に不満がある、とか?」

「い、いえ」


 あまりにもあっさりと、新しいバイトが決まった。だから、拍子抜けしている。 いやまぁ、採用されたのなら良いんだけど、ちょっとだけ納得いかなかった。そんな納得していない、という気持ちが表情に出ていたのだろうか。面接担当である男性が慌てて口を開いた。


「他に、アルバイトの面接を受けてる? そっちのほうがウチより条件が良いとか」

「いいえ、そんな事は無いんですが……」

「じゃあ、ウチは募集の時の時給にプラス100円するよ。どうかな?」

「え!? ひゃ、100円ですか」


 俺が困惑している間に、何を勘違いしたのだろうか時給値上げの提案をしてきた。何も言っていないというのに、勝手にアルバイトの条件が良くなった。さらに担当の男性が言う。


「うそうそ。150円アップにするよ。どう? ウチの条件は他に比べても、かなり良いと思うけど来てくれるかな」


 150円も時給をアップしてくれるのなら条件が良すぎる。男性の言う通り、他のアルバイトと比べてこれほど条件が良いところは、なかなか見つけれれないだろう。もちろん、即決だった。


「えっと……、それじゃあ。よろしくおねがいします」

「よろしくね! うちは君を歓迎するよ!」


 採用の面接は最速で終わったし、短時間で時給が150円もアップしていた。


 こんな事、ありえるのだろうか。俺が以前アルバイトしていたところでは、時給を10円アップしてもらうのに一生懸命に働いて、3ヶ月間ぐらい掛かったのに。


 まぁでも、アルバイトの時給がアップして困ることは無い。かなり条件を良くしてもらったので、このファミレスでアルバイトで働くことに決めた。

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