第3話 仮面で通学

 仮面を被り、家を出た。


 学校には、自転車に乗って向かう。学校まで、かなり距離があるけれど毎朝早くに家を出て間に合わせている。雨の日とか体調が悪い日は大変だけど、基本的に自転車通学である。


 ここからなら最寄りの駅で電車に乗って、高校に向かう方が早く到着するだろう。電車通学という選択肢もあるが、色々な問題があって俺は自転車の方を選んでいた。


 というのも、俺が電車に乗ると顔をジロジロと見られて目的地の駅に到着するまでずっと不愉快そうな表情をされてしまうから。何だこのブサイクは、という心の声が聞こえるような反応をされてしまう。俺もそんな反応をされるのを見るのは嫌だし、乗客たちを不愉快にさせてしまうのも申し訳なかった。


 それから、痴漢冤罪の問題もある。ブサイクな顔のやつが、痴漢行為の冤罪なんて罪を被せられたら、先入観と偏見で罪が確定されてしまいそうな恐怖があった。


 アイツはやりそうだと思われたり、やっぱりな、と周りから判断されてしまったら終わりだ。


 なるべく、そんな問題に関わらないよう警戒して、日頃から電車には乗らないようにしている。乗る必要がある場合は注意に注意を重ねて、ものすごく気を配りながら乗車するようにしている。


 ということで俺は、自転車通学だった。



「……」


 学校に向かう途中、すれ違う通行人たちからジロジロと見られているのを感じる。おそらく俺が仮面を被っているせいだろう。


 ただ、いつもに比べて周りの反応はマシだと思えたから、気にならなかった。


 いつもなら、ブサイクな俺の顔を見て、ウゲッというような反応をされてしまう。それに比べると今日は、疑問だったり訝しげな表情なのでマシだと感じていた。




 よくよく考えると、学校に到着する前に仮面を被ればよかったかもしれない。まぁでも、通学路で同じ学校の生徒に目撃される可能性もあるだろう。だから、家を出た瞬間から仮面を被っておく意味はあっただろうな。


 そんな事を考えながら自転車を漕ぐ。そして、とうとう学校に到着してしまった。駐輪場に自転車を止めて、荷台に乗せていたカバンを肩に担いだ。これから、教室に行かないと。


「ふぅ……」


 学校に到着して駐輪場に来るまでに、もう既にすれ違った生徒達から興味ありげな視線を向けられるのは気付いていた。


 教室に行くと、どんな反応をされるのか。クラスメートたちの反応が怖かったが、ここまで来て行かないわけにはいかない。授業に遅刻したら、成績に響くから。


 俺は気合を入れて、教室に向かった。

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