決断

気付くと、内田修司は病院にいた。

ベッドの向こう側で、誰かと電話をしている丹下が見えた。内田は、昨夜の記憶を辿ろうとした。善三の手下であることは間違いないと思った。

丹下は、気付くと携帯電話を切って、内田に近寄ってきた。

「修司。お前ってやつは、昔の俺と一緒だな本当のバカ野郎だよ。」内田は丹下の言葉が何故か嬉しかった。それと同時に義男の足取りが途切れたことへの憤りも、同時に沸いてきた。

「丹下さん。勝手な行動すいませんでした。

もしかしたら、善三は義男を海外逃亡させる気かもしれません。」内田の推理は丹下と同じだった。丹下の電話の相手は田崎亮だった。亮に先日の失態を詫び、それから、善三の内田修司への暴力行為、義男の海外逃亡の恐れなど警察の秘密情報をあかしていた。なぜ、田崎亮にそこまで話すのか、丹下にもわからなくなっていた。しかし、丹下の心のなかで亮には知る権利がある、と。自分に言い聞かせた。

亮は丹下の話を黙って聞いていた。

「そうですか。わかりました。あっ、それから、丹下さん。来週には還暦ですよね。本当にお疲れさまでした。あとは、俺にまかしてください。」丹下は、亮の最後の言葉を聞く前に電話を切ってしまった。

亮は、それから、店に降りて入口のドアに休業の告知を貼った。

それから、ゆっくり二階に上がり、台所の下のコメミツから取り出した、亮の右手には、二度と見ることの無いはずのもの、ラップでぐるぐる巻きになった、ベレッタM92FSがあった。

亮は、その鉄の塊を丁寧に分解し、さらに丁寧に組みあげた。過去の自分と向き合う覚悟はすでに出来ていた。自分の命の価値は大したことは無い。しかし、その他の人の命は遥かに尊い。俺も最後ぐらいは誰かの為に生きてみたい。亮は、これが自分に相応しい生き方だと本当に思った。

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