決別

義男は内田修司の尾行を、なんとかくぐり抜け3時に吉田優に会い。あるものを受け取ることになっていた。吉田優は何も知らずそれを義男に渡した。

「よっちゃん。本当に大丈夫だよね。私、今のよっちゃんが、なんか怖い。」吉田優は、義男の顔になにか恐ろしい殺気の様なものを感じた。

「大丈夫さ。これですべて、カタがつくんだ。」その日、義男は吉田優の部屋に泊まり、次の日の明け方、善三の所に戻っていった。

翌日。夜遅くから東京23区全域に雷雨がくるという、ラジオ放送を聞きながら、亮は、今夜の事を考えていた。

午後4時20分、カウンターの端に置いてあった、亮の携帯が鳴った。

「おい。亮か?」

「丹下さん。どうしたんですか。」

「大矢倉義男が、自首してきた。」亮は、奥歯を噛みしめた。

「更に昨夜、大矢倉善三を改造拳銃で殺害したと言っている。たぶん間違いないないだろう。今、善三宅に向かっている。とにかく、

これですべて終わったんだ。亮。」亮は丹下の話しを最後まで黙って聞いていた。自分と大矢倉義男に、なんの違いがあるというのか。俺が義男だったかもしれない。亮は、義男の罪と自分の過去とを重ね合わせていた。

亮は丹下との電話の後、晴海埠頭まで来ていた。胸元にある鉄の塊との決別のためである。これが有る限り俺に未来などない。亮は、それを波間に投げ入れた。

一緒に過去の自分も沈んでいく様であった。

午後7時。亮はいつもの様に、店の看板に明かりを灯した。

亮には今夜雷雨がくるとは思えなかった。何故なら見上げた夜空には、ひときわ優しい月が雲間から顔を出していたからだった。

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