3日目 目指せ国会

ーー世界が終わるまであと98日



「あの情報を知るには国に掛け合ってみるしか無いか…」彼は顔を洗いながら言った。彼が見つけた議会の文書、そこには何かの使用を許可する文が書いてあった。その何かを調べる為には、この文書を書くのに携わった人に聞くしかなかった。



「議会に参加していた日本人は……(多野本 信千)か…当時の日本の総理大臣だな…」

(多野本 信千 タノモト シンゼン 82歳 政治家 男性 9月13日生まれ AB型)

「当時32歳という若さにして総理大臣になった有名政治家…今は前線からは退いたが、裏で政界に影響を与えてるとも聞いたことがある…」

彼はネットで多野本の情報を集めた。家の住所までは分からなかったが、国会には度々姿を現しているという情報を掴んだ。

「状況が状況だからな…国会は相当な警備体制になってるかもしれない…なるべく怪しい感じにならないような服装にしないとな…」彼は学生服のシャツとズボンを履き、国会へ向かった。



国は、駅や電車も全て機械任せにしている。その為、こんな状況でも電車には乗れるのだ。「えーと、国会行きの電車は……あった…これだ…」彼は国会行きの電車のホームを見つけた。ホームの入り口はまるで空港の保安検査場みたいだった。国会行きの電車は他の駅には止まらず、国会前駅にしか止まらない。その為、危険物などの持ち込みを防ぐ為にゲートを通らなくては行けないのだ。「初めて通るけど、なんだか緊張するというか…怖いな……よいしょ………(通過許可シマス)良かった…これで国会に行けるな…」彼は電車に乗り、国会へ向かった。



電車の中は静かではあったが、ある程度の人数は乗っていた。すると一人の乗客が、彼に近付いてきた。(なんだ…この人…フードを被ってて顔が見えない…)「小僧、国会へ何しに行くんだぁ?」「え?あー…あと何日かで世界が終わるんで、国会でも見に行こうかと思いまして……」「そんな正装で観光かぁ?」「えー…まぁきっちりした格好の方が良いなと思いまして…」「まぁいい…世界が終わるからって、変な気を起こすんじゃないぞ…ワシのようになぁ……アハハハ!」フードの男性は高笑いしながらどっかに行ってしまった。「なんなんだあの人は…まさか国会で事件でも起こすんじゃないだろうな……そんなことはないか…」彼は少し不安になったが、気にしないことにした。電車は国会前に着いた。彼は電車を降り、国会へ向かった。



やはり国会はものすごい数の警備員に守られていた。どのように声をかければ良いのだろうか、彼は悩んでいた。「怪しい者だと思われたら危ないから、正直に話をするか…」彼は恐る恐る警備員に近付いた。「すいません…」「なんだね君は、何の用だね」「多野本さんに会いたいのですが…」「多野本先生に会いたいだと…分かった、ちょっと待ってろ」(案外すんなり行けたな、多野本さんにあの事を聞くだけと…)



「すいませんお待たせ致しました、わたくし、多野本先生の秘書を務めさせていただいておりました、御木 礼二と申します。」(御木 礼二 ミキ レイジ 40歳 秘書 男性 4月10日生まれ A型)「すいません…わざわざ、希島 隼人と申します。希島 文之の息子です。」「なんと…あの希島先生の息子さんだったのですか…」(実は自分の父は有名な政治家だったのだ、総理大臣にもなれたくらいの権限を持っていたが、病気で亡くなってしまったのだ。)(希島 文之 キジマ フミユキ 27歳没 政治家 男性 6月4日生まれ B型)「そうなんです…実は用件がありまして…多野本さんが総理時代に携わった環境維持議会の文書を見せていただきたいのですが…」「すまない、それは無理な話だ。」「では…多野本さんに会わせて下さい…」「それも無理な話だ。」「なぜですか…?」「多野本先生が行方不明だからだ…」「行方不明…ですか…?」「そうだ、IESOがあの事を発表した日に行方が分からなくなったのだ…あの文書と共に…。」彼はすんなり物事が運ぶと思っていたが、間違いだった。彼の頭の中は混乱していたが、一つだけ強く印象に残っていることがある。フードの男だ。「変な気を起こすんじゃないぞ、ワシのようになぁ…」彼の頭の中ではフードの男が、多野本さんを連れさらったりしたのではないのかと考えていたりした。「すまないが、そういった事なんだ、警察にも届けは出しているから、もし情報が入ったら知らせるよ、君の携帯番号教えてくれるかな?」「分かりました………です。」「ありがとうね、わざわざ来てくれて、それじゃあね……そうだ、一つだけ言っておくね、もし君が地球を救おうと考えているなら、君一人じゃどうにも出来ないからね。」「分かっています、でもやるだけやってみます。」「そうか…とにかく頑張ってな。」「ありがとうございます…」彼は少し気持ちを落ち着かせてから、電車に乗った。



「多野本さんが行方不明になっているとは思わなかったな…とにかく他の方法を探すしかないか…」彼は電車の中で少し睡眠をとった。



「また振り出しか…」彼は布団に入りながら色々と考えた。(多野本さんを探す、新しい方法を探す、諦める……)彼は色々と考えているうちに寝てしまった。それもそうだ、今日は怒涛の一日だったのだから。



ーー世界が終わるまであと97日と43分

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