第3話 人
「すごい!」
まず、東京駅に降り立った智子が驚いたのは人の多さだった。
さあ行くぞと気合を入れて歩き出すが、なぜかよく人に当たる。駅を出るまでに智子はほとほと疲れ果ててしまった。
(なんでこんなに人に当たるのだろう)
運動神経がいいわけではないが、自分がここまで鈍くさいとは感じたことはなかった。
それだけで、東京が自分を受け入れてない気がした。
(本社ってどんなとこだろう)
その日やっとの思いでホテルに着いた智子は、胸に不安を抱きながらその夜は疲労のため夢も見ずに眠りに落ちた。
その次の朝、少し寝過ごしてしまった智子は大急ぎで身支度を整えると、昨日の憂鬱とは打って変わって晴れやかな顔でホテルを出た。
これから始まる新たな未来に期待で胸が高鳴っていた。
智子の目に、世界は輝いて見えた。
「しまった」
場所を確認しようとして智子はホテルに住所と地図を置いてきてしまったことに気がづいた。
自分のあわてんぼうぶりに嫌気がさす。
「今からホテル帰ったら間違えなく遅刻だ」
智子はそう呟き、何かを決心して周りを見渡した。
「すみません、ちょっといいですか」
これだけ人がいるのに智子の呼びかけに足を止める人はいなかった。それどころか早足に智子の横を通り過ぎていく。
あきらめかけた時、ふとそこにたたずむ人物と目が合った。
智子はほっとしたように微笑むとその人物に声をかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます