ワクワクcooking ~カレー編~ リテイク
「ネコと、」
冷蔵庫の上で下々の者を見下ろすがごとき猫の口から渋いイケボが出る。
「フィールの、」
紺色のドレスにエプロンが付いたメイド服、結い上げた頭には銀髪と共にプラムが輝く。
その口からは元気な可愛い声が出ている。
「「ワクワクcooking。」」
そして二つの声はキレイにハモった。
「ネコ様、ネコ様。リテイクってなんですか。」
フィールが元気にタイトルに疑問をていする。
「やり直しって意味さ。前回はお米を炊くのでいっぱいに成っちゃったからね。もう一度カレーに挑戦しようという事さ。」
「すみません。」
しょんぼりとするフィール。
「どうしたんだい。急に謝って。」
「だって、ワタシが前回ちゃんとお米研げなかったからやり直しになっちゃったんですよね。」
「フィールよ、そんなに気に病むことはない。そのおかげで吾輩はまたこの企画を行う事が出来た。」
「ネコ様、怒ってない。」
「怒ってないよ。むしろ楽しんでいるよ。」
「そうですか、良かったです。」
フィールはネコに笑顔で答えた。
「それでネコ様。まずはお米を用意するところからですか。」
「ふふふ、安心するがいい。今回はなんとお米はすでに炊いてあるのだ。」
パンパカパーン、という効果音と共にふっくらキレイに炊けたご飯を見せるネコ。
「わあ~、すごいいです、ネコ様」
と、返って来ると思っていたネコは、しかし予想した返しがないのに疑問を覚える。
「むむむ~。」
見てみればフィールは何やら難しい顔をしてうなっていた。
「どうしたんだい。」
「……え?――――あ、何でもないです。さ、流石はネコ様です。準備万端です。」
「う……うん、――――えっと、それじゃあさっそくカレー作りに入ろうか。」
「それじゃぁ。カレー作りを始めたいと思いいますが、レシピは用意したかい。」
「ハイ、ネコ様。レシピってなんですか。」
ネコの質問に元気に返すフィール。
それにうんうんと頷いてネコは説明をする。
「そうそうこのノリだよ。いいっかいフィール、レシピとは料理を作るための手引書のことだよ。」
「ハイ、ネコ様。手引書とは何ですか。」
「こう作ればうまく作れるうよって言う説明書さ。」
「なるほど、分かりました。それって昨日私が寝た後にネコ様が用意してたこれですか。」
「見てたのかい。」
「だってネコ様、いつまでたってもお布団に入って来なかったから気になって。」
「ううん、ゴホン。フィール君。その様に吾輩たちがいつも一緒に寝ていることをばらさないように。」
「あれ?これ言っちゃダメでした?」
「さて、レシピ通りに作ることが料理初心者の大事なところだ。これができるようになることがまずは肝要だ。」
「ハイ、ネコ様。」
「通常はカレールーの箱に書いてあるとおりに作るのがベターだ。」
「これですね。」
フィールはカレールーの箱を手に取りその裏面に記載されている説明文を読む。
フィールはここ最近、料理だけじゃなくニホンゴの勉強もしている。
「ここに書かれているとおりに作ればいいのですね。」
「だがそれでは面白くない!」
ここでネコがのたまった。
「ネコ様。ワタシ勉強して知ってっる。それフラグってやつです。」
「たしかに、しかしそれは素人が言ったらの話だ。」
ネコは冷蔵庫の上で胸を張って腕を組むと自信満々に語る。
「だが吾輩は長く生きた猫である。カレーのアレンジなどお手の物なのだ。」
「……………………………………………………………………。」
「どうしたのだフィール、苦い顔して。」
「いえ、……わたしの元の世界にそんなこと言って食中毒出した人がいたなぁ~、と思って。」
「だ、大丈夫だ。このレシピは何度も作った家庭のレシピだから。トメさんも美味しいって言ていたから。」
「ならば大丈夫ですね。」
「気を取り直して、まずは玉ねぎのみじん切りを用意する。フィールは包丁は使えるかい。」
「大丈夫です。」
そう言ってフィールは玉ねぎをみじん切りにしていく。
「大体1皿一個分くらいの目安だ。」
「結構多めなんですね。」
「玉ねぎが美味しんだよ。」
「普通の猫なら食べたら死ぬんですよね。」
「猫又になって何が幸せって、食べられるものが増えたことだね。」
「それで次は?」
「あとニンジンをみじん切り、ジャガイモを少し大きめに切る。」
「ハイ、ネコ様。」
フィールは年の割に手際よく野菜を切っていく。
「今日使うのは牛肉だ。これも一口大に切って。」
「ハイ、ネコ様。」
「よしそれじゃあ鍋を火にかけて温める。温まったらサラダ油を引いてお肉を炒める。」
「ハイ、ネコ様。」
「くっつかないように気を付けて、――――表面の色が変わったら1度取り皿に移して。」
「ハイ、ネコ様。」
「次は鍋で玉ねぎを炒める。コツはちょと油を多めにすること。で、玉ねぎが色があめ色になるまで炒めるんだけど焦げ付かないようにね。」
「ハイ、ネコ様。」
「玉ねぎがあめ色に成ったら残りの野菜とお肉、後好きならマッシュルームなどのキノコも入れる。」
「この缶に入った奴ですか。」
「一度ざるにきるんだよ。」
「ハイ、ネコ様。」
「でこれに水を入れる。量は全体が浸かるくらい。これを最初は強火で煮込む。すると灰汁が出てくる。」
「アクって?」
「この灰色っぽい泡だよ。これを掬って捨てる。」
「こうですか。」
「そうそう。で灰汁を取ったら蓋をして10分ほど煮込む。その後はいったん冷ますんだ。」
「ハイ、ネコ様。」
「ネコ様、なんで一度冷ますんですか。」
「詳しい理屈は省くが簡単に言うと冷ますことでバラバラの味が1つにくっ付くんだ。そして具材にしっかり味がしみ込む。」
「へ~。」
「これは煮込み料理全般に使えるやり方さ。」
「分かりました。」
「さて、しばし寝かした鍋にルーを入れようか。」
「ハイ、ネコ様、」
「温めなおしたら2種類のルーを入れる。」
「甘口と激辛の2種類ですか。」
「うん。今回は2人だから半分ずつね。これにからいのが苦手ならはちみつやレモン汁を入れるといい。」
「はちみつは分かりますがレモン汁?」
「酸味は辛味を和らげるんだよ。」
「フィールは辛いの好きです。」
「じゃあこれで完成だね。ご飯をよそってさっそく食べよう。」
「ハイ、ネコ様。」
「「それではいただきまーす。」」
「う~美味しいです。」
「ふふふ、自分で作ったつっくったからこその味だよ。」
「ネコ様、猫の姿でも器用に食べますね。」
「吾輩猫又だからな。」
「そうですね。ねぇネコ様、また料理教えてくれますか。」
「もちろんだとも。ワクワクcookingはまだまだ続くぞ。」
「ハイ、ネコ様。」
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