閑話
ワクワクcooking ~カレー編~
「ネコと、」
宙に浮く黒猫から渋い声がする。
「フィールの、」
銀髪の少女から可愛らしい声がする。
「「ワクワクcooking」」
2つの声がキレイにハモった。
「ネコ様、ネコ様。ワクワクcookingとは何ですか。」
デニムのホットパンツに黒いタンクトップ、その上から白いエプロンを付けた美少女フィールが元気に質問する。
「いい質問だフィール君。」
答えたのは宙に浮かんで縦に伸びた夜色の毛色の猫だった。
ネコは尻尾をくねらせ、前足を腰に当てて語る。
「第1回目はやはり解説が必要だからね。」
「ハイ。ワタシちゃんとネコ様の言う通りに出来ました。」
「うん、そこは言わないほうが良かったかな。」
「すみません。」
「いや、怒ってはいないよ。」
「さて、ワクワクcookingだが、」
改めてネコが話し始める。
「このコーナーはフィールの為に料理の楽しさを教えようというコーナーである。」
「わ~、パチパチパチパチ。ネコ様ありがとうございます。」
フィールは口でもパチパチ言いながらも手を叩いている。
その顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「うむうむ、そう悦んでくれるとこのコーナーの為にキッチンを一新したかいがあるというものだよ。」
そう言ってネコはピカピカのキッチンを見渡す。
そこは料理番組のスタジオのようなピカピカで広々したキッチンがあった。
「いきなりガッガッガッ!ガッガッガッ!ていい始めてびっくりしました。」
「うん、説明なしで始めちゃってごめんね。」
ちなみに改装はネコによる日用大工だった。
「それでは、記念すべき第1回の献立は~~~~。」
「わ~~~~~~~~~。」
「ドルルルルルルルルルルルルル。」
「ドルルルルルルルルルルルルル。」
「カレーライスである。」
「わーい。カレーライスです~。で、ネコ様、カレーライスってなんですか?」
「おっと、そこから説明しなきゃならないか。カレーライスの歴史を紐解くと長いから割愛するけど、カレーライスは日本の国民食だよ。」
「おおとぉ~、それは楽しみです~。」
「フィールは辛いの食べれるかい。」
「ハイ、この前ネコ様と一緒にカレーライス食べに行きました。」
「ははは、このお茶目さんめぇ。」
「ハイ?」
~注意~
「ちなみにカレーライスには玉ねぎが入ってます。」
真面目な顔でネコが言う。
「それが何か?」
と疑問をネコにぶつけるフィール。
「ネコは玉んネギなどのネギ類が食べられない。いや、正確には食べたら死ぬ。」
「なっ!――――だめです。ネコ様死んじゃダメです。カレーライス食べちゃダメです~。」
「フィール、安心しなさい。吾輩は猫である。しかし猫であっても猫又である。人に化けれるようになった時点で玉ねぎを食べれるようになったのだよ。」
「ネコ様死にませんか。カレーライス食べてもいいのですか。」
「ああ、もちろんだ。だが、妖になっていない猫は玉ねぎで死んでしまうからゼッタイに食べさせちゃだめだよ。」
「ハイ。」
「玉ねぎのほかにも猫が食べられない食べ物はたくさんある。猫にご飯を上げる時はちゃんと調べてから上げようね。」
「分かりました。」
「みんなもちゃんと守ってね。吾輩との約束だよ。」
「それじゃあさっそく始めよう。」
「ハイ。まず何をしたらいいですか。」
「手は洗ったかい。」
「ハイ。」
「それじゃあお米を洗うところから始めようか。」
「お米ってなんですか。」
「カレーライスの白いやつさ。」
「おお~、アレがお米ですか。」
「またの名をライスともいう。」
「ネコ様、ネコ様。この用意されてるお米柔らかくないです。」
「まずはそれを柔らかくすることから始めるよ。」
「ハイ。」
「まずはそのお米をこっちのシンクに――――
―――――パク。
「ネコ様~。美味しくないです~。」
「なんで今食べたの。」
「このままだとどんな味がするのか気になったんです~。」
「お米はそのまま食べちゃダメだよ。ほら、ペッしなさい。」
「ぺっ、ぺっ。」
「それじゃあ改めて、このシンクにお米の入ったボウルを置きます。」
「こうですか。」
「そうそう。そしたらこれに水を入れます。」
「……えっと?お水は。」
「この蛇口から出るよ。」
「まさかシャワーと同じでブシャァーするですか。」
「ゆっくりすれば大丈夫だよ。」
「っ――――――。」
「そんなに慎重にならなくても大丈夫だよ。」
「ハイ。」
ガコッ。 ブシャーーーーーーーー!
「きゃああああああああああああああああああ。」
「さてようやくお米を水に漬けれたけど。」
「すみません。騒いでしまって。」
「いいよ、それよりこの水を切るよ。」
「水を切る?」
「このボールのふちに手を添えてお米をこぼさないように水だけ流すんだ。」
「”え”?――――――――――じゃぁ何で水入れたんですか。」
「そんな怖い顔しないで。これはお米を湿らせるためだよ。あと急がないと美味しくできないよ。」
「ハ、ハイ。」
「けど焦らないように。お米がこぼれちゃうから。」
「ハイ。」
そ~~~~~~~~~~。ザラァ。
「わあああ、わああああああああ。」
「焦らない、焦らないの。余計にこぼれるから。」
「ネコ様ネコ様~」
「指は伸ばさずにおわん型にするんだよ。」
「こうですね。」
すちゃぁ。ザラァ。
「わああああああああああああああああああ。」
「さて、これを次は研ぎに入ります。」
「研ぎ?」
「お米とお米をこすり合わせて表面のぬか、汚れを取る作業を研ぐというんだよ。」
「なるほど。」
「やり方は力を入れずにお米全体をかき混ぜる。この時外側から内側に向かって回すように動かすのがコツだよ。」
「ふむふむ。」
ジャキ、ジャキ、ジャキ。
「おっ、上手上手。」
「えっへん。ワタシもやればできるのです。」
「じゃあこれに水を入れてすすいで、水を切ろうか。」
「”え”?」
悪夢再び。
「これを何回か繰り返して。」
「ネコ様は悪魔ですか。」
「吾輩は猫である。でもこれをしないと美味しくご飯が食べれないからね。」
「ご飯を食べっるってとても大変で贅沢なんですね。」
フィールは想像の夜空に浮かぶ星を見つめて涙を流す。
「その気持ちは間違いじゃないけど、お米1つ炊くだけで悟る事じゃないよね。」
「それじゃ、これをこの入れ物に移して、平らなところで水を入れる。」
「またですか。」
「もはや水恐怖症だね。とりあえずこのカップで、お米が2合だからこの2の線まで水を入れてね。」
「2の線?」
「あっ、そうか文字も読めないんだよね。これも対策しなきゃ。」
「ネコ様、2の線って下から2つめでいいですか。」
「ん?ああそうだよ。」
「つまりこれが2でこっちが1ですね。」
「うーむ、フィールは頭はいいよね。」
「はい?」
「なんでもないよ。それよりそこまで水を入れたらこの入れ物をこっちの炊飯器って入れ物に入れるんだ。」
「はい、入れました。」
「そしたら蓋を閉めて、このスイッチを押す。」
「ポチッとな。」
「後は炊けるまで待つだけだ。それまでお茶にしようか。」
「はーい。」
「それでは、ご飯が炊けました。」
「わー、ふっくらしてます。」
パクッ。
「美味しいです。」
「ははは、つまみ食いで全部食べないようにね。」
「ハイ。」
「それじゃあ、カレーを作ろうか。
「ハイです。」
「まずはこの鍋でお湯を沸かして。」
「ハイ。」
「で、こっちの袋をお湯に入れる。」
「ハイ。」
「温まったら袋の中身をお皿に盛ったご飯の上にかける。」
「はい。」
「これでカレーライスは完成だ。」
「やったぁ。」
「それじゃぁ、いただこうか。」
「いただきま~~す。~~~~~~~~ん、美味しい。って、これレトルトじゃないですか。」
「お米炊くまでに時間がかかり過ぎたんだよ。カレーはまた今度ね。」
「うう~~~~~~、仕方ないです。今度ちゃんと教えてください。」
「もちろんだとも。」
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