第1章

1.人生初デート!?







「ど、どういうことだよ……」


 週末、俺はゲッソリとショッピングモールへやってきていた。

 初めて赤羽を救った日から、数日が経過。しかし、その翌日にも赤羽の寿命は極端に短くなっていた。それが指し示した日付というのが、今日である。

 日曜の夕方に、赤羽ミレイは死ぬことになっていた。


 そのため、俺は思い切ることにした。

 死なせたくないのなら、もういっそ自分の監視下に置くようにしておけばいい。

 そんなわけで、俺は赤羽に告げたのだった。


『今度の日曜、俺とデートしてくれないか?』――と。


 ――いや、さ。

 こういうのって、もうちょっと先のイベントじゃないの。

 なんで俺は、出会って数日の女の子をデートに誘ってるのさ。そんなキャラじゃないよ、その場で聞いてたクラスメイトもポカンとしてたよ。

 でも、もっと衝撃を与えたのは赤羽の反応だった。


『…………はい』


 頬を赤らめて、口元を隠しながらそう言って視線を逸らしたのである。

 まさかの一発OKという珍事だった。


 はてさて、そんなわけで俺は生涯初のイベントに挑もうとしている。

 女の子(しかも美少女)とのデートだ。浮き足立つのを必死にこらえながら、しかしどうしても胸躍ってしまう。そして、同時に緊張で汗が止まらなかった。

 でもそこで、もう一度しっかりと気持ちを切り替える。


「いいや。今日の一番の目的は、赤羽の命を救うことだ」


 そうだった。

 もはや順序が分からなくなっていたが、それだけは大切なことだ。

 優先するべきは、その時間までに赤羽の寿命を決定付ける原因を突き止めて、排除すること。それが不可能だったら、先日のようにギリギリにでも回避することだった。なるべく、そうはなりたくないけど……。


「ふー……!」


 俺は大きく息をついて、胸の鼓動に静まるよう言い聞かせる。

 その時だった。


「あの、坂上くん? ……こんにちは」


 彼女の声が聞こえたのは。


「ん、赤羽か――」


 俺は鈴の音のような声のした方へと視線をやる。

 すると、そこに立っていたのは……。




 リンゴーン、リンゴーン、リンゴーン……!




 またもや、教会の鐘が聞こえた。

 俺は言葉を失って、その場に立ち尽くす。


「あの、変じゃないかな……?」


 赤羽はそう言った。

 身に着けているのは真っ白なワンピース。

 もうね、清楚。清楚オブ清楚’sって感じだった。

 小物入れも愛らしいデザインで、しかし過度に主張しない。




 こんなん、可愛すぎるでしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?




 俺は思わず、その場でうずくまる。

 いかん。頭が沸騰して、まともに赤羽の顔を見れない。


「だ、大丈夫ですか……?」


 そんな俺を心配したのか、彼女は近寄ってしゃがみ込む。

 ふわりと香ったのは、石鹸のそれ。


「だい、りょう、びゅ……」


 俺は舌足らずな返答をした。

 ふらふらと立ち上がり、頬が熱くなるのを堪える。


「それじゃ、い……行こうか」


 そして、ぎこちなく続けるのだった。

 すると赤羽は――。



「……はい!」



 そう言って笑う。

 そんな感じで、俺の人生初デートは幕を上げた。


 

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