第10話 ブラックバード
所用を終えて街から戻ると、外装工事中のご近所には作業をする業者の車が何台か停まっていた。荷台には梯子や様々な道具が積まれていて、玄関の門の前にも道具が置かれていた。車が近づくと、道の中央付近にまで黄色いトートバッグが置かれていた。普段、人通りの少ない町とはいえ、こんなところにカバンを置いておくとはのんきなひともいると思って車を近づけると、その黄色いバッグの中から黒い塊が出てきた。静かに減速すると、その黒い塊は私に臆することなく当たり前のようにそのカバンの中から袋に入った菓子パンを1つくわえると、私を一瞥してふわりと飛び上がった。
天狗か?と思ったが、カラスだった。私を警戒するでもなく「車が近づいたから避けたのだ」と言いたげに私を横目にカラスは私の帰る方向に飛び去った。
少し走るとその”天狗の使い”は道端で袋を開いて中身を取り出しているところだった。「またお前か」といわんばかりに悠然と飛び上がると、その天狗の使い氏は私のうちの屋根に登って美味しそうにパンを食べ始めた。
「屋根の上に食べかけを置いていかないように」と私がつぶやくと「あぁ(アー)」と低い声でのたまった。
「そうですか、美味しいんですか。よかったね」と私がつぶやいた。
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