第7話ユカのまわりのひと 

 ユカの父親は、自分の父親のことが嫌いで大人になると、自分の父親の会社の隣に同じ業種の会社を建てて自分の父親の会社をとうとう潰してしまったらしい。 いつも気難い父親を彼女は社長と呼んでいた。

 ある日、いつになく上機嫌な彼女の父親に彼女が理由を問うと、彼女の父親が勝ち誇ったようにこう言い放った「今日な、俺の敵が死んだ」そう言い放つと口角を上げて不敵に笑ったそうだ。


 ユカの周りの人 従業員Aさん

 前出の通り、ユカの父親は実父の会社の隣に同じ業種の会社を建てたあげく本家を潰すくらいのひとにもかかわらず、社会的弱者のようなひとを雇う面もあった。そんなひとりにAさんがいた。

 ユカからすると身体の不自由なAさんのような人は福祉作業所などで働くべき種類のひとだったそうだ。そんなAさんがある日嬉しそうな顔をしてユカに言ったそうだ。「ユカちゃん聞いて。おれな、家をな、ついに買うてん」社長の娘である自分すら借家住まいであったユカはたいそう驚いたそうだ。Aさんが嬉しそうに「見に来て」というのでお祝いを持ってAさんの家を見に行ったユカは教えてもらった住所に家らしきものが見つからずに困ったそうだ。


 ある日、シャッター付ガレージの並ぶ町外れをユカとその話をしながら通りがかると、奥まったところにある平屋の倉庫を指さして「あれがAさんの家」というユカの眼は寂しそうだった。


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