第40話 GディバイドVSハルバード④
さらにスピードを上げる白い機体の外観に変化が起き始めていた。機体背部に設置されている2基の大型メインスラスターと脚部スラスターの出力が上昇、両肩アーマーの一部が外側にスライドし露出した放熱部から熱と共に余剰粒子が排出され始める。
下腿外側の放熱カバーが開き、内部に収納されている放熱フィンが現れ、そこからも放熱と余剰粒子の排出が開始される。
全身から赤い粒子を放出し始めた白い死神は、さらに加速し前方を飛行していた<ハルバード>に追いつき、その側面部にブラスターライフルを連射し攻撃を再開する。
相対速度を合わせられた事で、回避もままならず巨大な機体はライフルから放たれた高出力の粒子を防御層に全弾もらう。
貫通には至らなかったが、ターミナスレイヤーの出力は低下し攻撃を受けた衝撃で機体は減速する。
「くそっ! どうなってんだ、あの白いのは!?」
<Gディバイド>は<ハルバード>の側面に張り付きながら今もライフルによる攻撃を繰り返していた。
それによりモニターに表示されるターミナスレイヤーの出力がどんどん低下しているのが見て取れる。
「くっ……けどよ、そんなスピードじゃ急な方向転換はできないよな~!!」
サンスは機体の背部のミサイルポッドを開き、<Gディバイド>1機に狙いを定めて発射した。
残っていた12発のミサイルを全て投入した弾幕が高速で動く白い機体の前方にばら撒かれ、壁のように進路を塞ぐ。多少軌道を変えた程度ではとても
「この<ハルバード>に追いついてきたのは褒めてやるがここまでだ! そのままミサイルの壁にぶち当たってぶっ壊れろ!!」
勝利を確信するサンスであったが、彼が笑っていられたのはここまでだった。
なぜなら<Gディバイド>が速度を落とすことなく、ほぼ直角に進行方向を変えるという運動力学を無視したような動きを見せたからだ。
大きく進路を変えてミサイルの壁をやり過ごすと、白い機体は更に加速し再び<ハルバード>との距離を詰める。
「嘘だ……あんなのでたらめだ! 機体もパイロットもどっちもいかれていやがる! 機体は中に乗る人間の事を無視した動きをするし、パイロットはそんな機体のGに耐えてやがる! あんな動きに人間が耐えられるわけがない! あれに乗っているのは正真正銘のバケモノだ!!」
同じ高機動の機体に乗っているからこそ、先ほどから<Gディバイド>が見せる動きにサンスは恐怖していた。
厳しい訓練とコックピットの耐Gシステムに加え専用のパイロットスーツを着込んでも、全速時には直進や緩やかな軌道で方向転換をするのがやっとなのだ。
さっき白い機体がみせた急な進路変更をすれば、自分であれば良くて気絶、悪ければGに耐えきれずに死んでしまうかもしれない。
しかし、あの白い奴のパイロットは、その後も機体をさらに加速させ自分を追ってくるという離れ
分厚い装甲と巨大な体躯に守られているはずのサンスは、後ろから迫る小動物に命の危険を感じているような感覚に襲われていた。
だが、このまま追いかけっこをしていてもスピードで勝る敵に追いつかれて、ライフルでなぶり殺しに遭うのは目に見えている。
サンスは機体の速度を落とし、接近戦で勝負をつける選択をするのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます