第38話 GディバイドVSハルバード②

 コックピットモニターには、距離を取った<ハルバード>が大きな軌跡を描きながら方向転換をする様子が映し出されている。

 こちらに正面を向けている事から、再び高速攻撃を敢行するつもりなのだろう。あの驚異的な速度を活かしたヒット&アウェイ攻撃は中々にやっかいだ。


「あの白い機体は……まさか噂の"白い死神〟か? ……くくく、丁度いいじゃないか! あいつをやれば<ハルバード>の名にはくが付くってもんだ! 落ちろぉー! 白いのー!!」


 サンスは<エンフィールド>には目もくれずに今度は<Gディバイド>を執拗に襲い始める。遠距離からターミナスキャノンを発射し、互いの距離が近づいた瞬間にはクローアームを射出し攻撃してくる。

 ユウはそれを回避してライフルで攻撃するが、その時に敵は射程外まで退避し方向転換をした後、再度攻撃をしかけるという状況が続く。


「くそっ! これじゃ、らちが明かない!」


 一方<エンフィールド>は、<Gディバイド>と<ハルバード>の戦闘宙域から距離を取りつつ小破した箇所の対応を行っていた。


「左舷部火災発生、AIメーティスにより消火システム起動、現在消化中、破損部の隔壁閉鎖」


 メイが破損した左舷部の状況を報告する。クルーに被害が出ていない事が不幸中の幸いであった。

 とりあえず艦の航行に問題が無い事を確認すると、アリア達は苦戦を強いられている<Gディバイド>の戦いをモニターで見守る。

 援護攻撃を行おうにも敵機の動きが速すぎるため効果は薄く、かえってユウの邪魔になるだろうという事で、戦闘から距離を取っているのだ。


「アルマ少尉……勝てるでしょうか?」


「かなり難しい状況でしょうな。あの大型機は凄まじいスピードでヒット&アウェイを繰り返しています。単調な攻撃ではありますが、機体特性を十分に活かした戦術です。すれ違いざまに強力な一撃を叩き込めればダメージにはなるでしょうが、敵は機体前面にターミナスレイヤーを集中させているため<Gディバイド>の高出力モードのライフルでも貫通できないようです」


 アリアとアルバスは<Gディバイド>が勝つにはどうすればいいか考えるが、敵の強力な防御層を破壊できない現状ではどうしようもないという結論に至る。


「正面が駄目なら側面や後ろから思い切り攻撃をすればいけるんじゃないの?」


「アルマ少尉も同じことを考えて何度か側面への攻撃を試みているようですが、如何いかんせん敵のスピードが速すぎて上手くいかないようですな。なによりブラスターモードは連射できませんから、それも苦戦する要因の一つのようです」


 ルーシーの提案も実行するのは中々難しい事が分かり、ますますブリッジ内の空気は重くなる。こうなると他の『アンデッド小隊』の合流が現状打破の有効手段だが、味方部隊を守りながらの戦闘に苦戦している様子がモニターに映し出される。彼らがこちらに戻るには、まだ時間がかかりそうであった。


「アルマ少尉……」


 モニターには<ハルバード>の放つミサイル群を何とか回避する<Gディバイド>の姿が映し出され、アリア達はその様子を眺める事しかできなかった。

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