第35話 パラライズ・アタック⑤

 乱戦の中、<Gディバイド>に向けて多連装の小型ミサイルが発射される。コックピットでは警報が鳴り、機体に近づく物体の情報がモニターに表示される。


「ミサイル……重武装の機体がいたのか。……けど!」


 ユウは機体のスラスターを最大にしてミサイルを正面に捉えたまま高速で後退し距離を取る。

 白い機体を追尾するミサイルは8発。<Gディバイド>はブラスターライフルで4つを落とし、さらに接近する4つに対しては胸部に装備された2門のレーザーガンで叩き落としていく。

 胸部レーザーガンは威力こそ低いが連射性に優れており、接近戦における牽制や今回のような実弾兵器への攻撃で性能を発揮する。

 また<カトラス>程度であれば、ターミナスレイヤーを破壊し直接ダメージを与える事も可能だ。

 ミサイル前機撃破後、ユウはミサイルを発射した重武装型の機体を捉えると、ブラスターライフルの高出力モードを起動させ、ロックオンした敵に向けて赤色化した超高出力のターミナス粒子を発射する。

 赤色のビーム砲は敵機を数体巻き込みながら目標に命中し、その身体を融解・爆散させる。

 再びユウは機体を前進させ、敵機の破壊を継続する。その際大きく迂回してきた敵機が<Gディバイド>の背後に回り込み襲い掛かろうとするが、それが叶う事はなかった。

 <Gディバイド>の後方に待機していたケインの<セルフィーカスタム>が、背後に回り込もうとした敵を狙撃したからである。

 <カトラス>のレンジ外からの攻撃によって敵パイロット達は焦るが、次の瞬間には正確な狙撃によって、コックピットを撃ち抜かれ絶命した。


「……3機撃破! ユウ、もっとこっちに敵さん回してもいいんだぜ、無理すんな」


「こっちは大丈夫だ。それに思ったよりも敵の抵抗が弱い……そろそろ決着が着くだろう」

 

 敵部隊の1時方向へ攻撃をしていたマリク機とルカ機も順調に敵を落としていく。マリクとユウは得意とする戦闘スタイルが似ており、マリクは高機動にチューンされた<セルフィーカスタム>を自在に操り敵を翻弄しながら撃破していく。

 ルカの後方支援に特化した<セルフィーカスタム>は高出力のターミナスキャノンと高い防御力に特化している。

 兄妹による息の合ったコンビネーションで次々と敵を撃破し、最終防衛ラインに迫っていた。

 誰もがこの戦いが間もなく終わるだろうと考えていた時、突如リザードの格納庫側から高出力のビーム砲が放たれ、<セルフィー>数機を破壊する。


「なんだ今のは!? どこからの攻撃だ?」


 攻撃範囲から外れていたマリクは、その砲撃の一部始終を目の当たりにしていた。その威力は並みのオービタルトルーパーの出力を越えている。だからと言って、戦艦クラスの反応はレーダーには無かった。


 『シルエット』側を襲った突然の攻撃。<エンフィールド>がその発生源を特定すると、そこには1つの熱源反応があった。

 だが、それは通常のオービタルトルーパーのものより熱量が多く、戦艦よりはずっと低いものだった。

 直後にモニターに映ったのは、戦闘機が巨大化したような物体であった。ただ、機体の左右には腕が生えており、その先端は爪のようなパーツが見られる。


「何……あれ?」


 メイがぽつりとこぼす。彼女がそう思うのは当然であった。人型であるオービタルトルーパーの存在に慣れている者にとって、その姿は異形であった。

 パッと見た感じでは巨大な戦闘機に腕が生えている物体なのだから。だが、そんなちぐはぐな物体は急加速し、一気にオービタルトルーパーの乱戦地帯に突っ込んで来る。

 <セルフィー>部隊は、TBターミナスビームライフルで迎撃するがその巨大な機体の表面に弾かれ効果は確認できなかった。

 それどころか、戦闘機モドキは勢いを落とすことなく、戦場のど真ん中で背部に設置してあるミサイルポッドから大量のミサイルを発射した。

 <セルフィー>部隊は、蜘蛛の子を散らすようにミサイル群から逃げ惑うが、その多くは機体各部を損傷し、戦闘継続が困難な状況に陥る。

 『アンデッド小隊』の4機は、各々ミサイルを迎撃しながら回避しており機体に損傷は無かった。

 マリクの<セルフィーカスタム>は前腕部に装備されたレーザーガンとTBライフルを巧みに操って、自機だけでなく味方の<セルフィー>がこれ以上ミサイルに晒されないように撃破していく。

 ユウも同様に味方部隊の盾になるように、ブラスターライフルと胸部レーザーガンで対応していた。


「隊長、大丈夫ですか?」


『ああ、こっちは問題ない。……だが味方が壊滅状態だ。奴1機のせいでな』

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