第34話 パラライズ・アタック④

 資源衛星リザード周辺では至る所で、オービタルトルーパーによる戦闘が行われていた。

 <セルフィー>のTBターミナスビームライフルが<カトラス>を捉え、青色のターミナス粒子によって構成されたビームが右足に直撃し、半壊させる。

 オービタルトルーパーの機体表面にはターミナス粒子により形成される防御層――ターミナスレイヤーが展開されている。

 低火力の攻撃では、防御層によって威力が削がれ一撃でその装甲を貫通する事は出来ない。

 そのため、火力がそこそこの量産機同士の戦いは長期化しやすい。<カトラス>のTBマシンガンは連射性に優れてはいるが威力は低く、<セルフィー>のターミナスシールドを破壊する事はできず、敵機の接近を許しTBセイバーのビーム刃で破損した箇所に刺突攻撃を受け撃墜された。

 戦場のあちらこちらでは、同内容の戦いが散見され当初は優位であった『シルエット』側も、攻めあぐねているうちに『地球軍』のオービタルトルーパー隊の第2波を許し、少しずつ劣勢になっていく。

 機体性能では<セルフィー>に軍配が上がるものの、『地球連合軍』最大の武器である〝物量〟は長期戦で真価を発揮する。

 徐々に戦況が自分達側に有利になると、リザード指令室は次第に活気づき自分達の勝利を確信するのであった。

 その時、3隻のイーグル級戦艦とは別の方向から放たれた超高出力の2連装ビーム砲が<カトラス>4機を破壊する。

 ビーム砲の射線軸から発射位置を特定すると、そこには白い戦艦の姿があった。今まで見た事のない戦艦であり、指令室のライブラリーでいくら検索しても該当するものはなかった。

 その戦艦の出現位置から、先程リザードに甚大な被害をもたらした白いビーム砲はこの艦によるものであると、リザードの司令官達は確信した。


「イーグル級3隻と所属のオービタルトルーパーは第1陣の部隊で抑えろ! 第2陣の戦力を全投入してあの白い戦艦を落とせ!」


 数か月間にもわたる安寧あんねいの時間を終わらせた<エンフィールド>に憎しみをぶつける資源衛星リザードの駐留部隊。

 だが、一発の砲撃がその勢いを殺す。無作為に展開したオービタルトルーパー隊の中心部に放たれた、赤い閃光――<Gディバイド>のブラスターモードの砲撃は敵数機を巻き込み破壊する。

 突如現れた白い機体の攻撃に混乱する中、攻撃範囲外から正確にコックピットを撃ち抜く狙撃が立て続けに行われ、リザードから発進した第2陣の部隊は足を止め防御態勢を取った。

 だが、そこに<カトラス>のターミナスシールドを貫通する高出力のターミナスキャノンが放たれ、さらに被害を拡大させていく。

 固まっているのは危険と考え散開すると、すかさずライトグリーン色の<セルフィーカスタム>が専用のTBライフルで奇襲し、各個撃破していく。

 

「よし! このまま一気に叩くぞ!」


 ライトグリーンカラーのマリク機に続いて<Gディバイド>も前方に展開する敵部隊に突っ込む。

 プレッシャーをかけてくる2機に対し、『地球軍』のパイロット達は気圧されるように機体を後退させる。

 そのような敵の行動を確認すると、ユウはここぞとばかりに機体を突貫させるのであった。


「アンデッド4了解、10時方向の敵は俺が叩きます。ケイン、援護頼む!」


『アンデッド3了解! いつも通り背中は守る。お前は気にせず前の敵に集中しろ』


「了解!」


 手短に通信を終わらせると、<Gディバイド>は近くの敵にブラスターライフルから黄色い高出力のターミナス粒子を発射し、敵を撃破していく。

 <カトラス>のジェネレータ―出力では、低出力の青いターミナス粒子しか展開できないため、その上位に位置する黄色いターミナス粒子による攻撃を防ぐことはできない。

 そのため、<カトラス>を覆う青い防御層は<Gディバイド>の攻撃の前では紙切れ同然であり、直撃を受ければ黄色いビームにより装甲は溶け、内部機構を貫通し破壊される。

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