第33話 パラライズ・アタック③

 一方、資源衛星リザードからは損傷が軽微であった格納庫から続々とオービタルトルーパーが出撃していく。

 それは、格納庫が攻撃目標である妨害電波発信装置から離れているためであった。

 実際に、ヴェルブラストが直撃した周囲は深刻なダメージを受けており、基地の約1/4がたった一発の砲撃で吹き飛んだのである。

 リザードに迫る敵艦4隻の姿をモニターで眺めながら、指令室は混乱しつつなんとか体勢を立て直していた。


「生きている防衛システムを稼働させろ! まだだ! たった4隻程度の戦力など……! オービタルトルーパーを全機発進させろ! 奴らを叩き潰せ!!」


 リザードの司令官は自らの面目を潰した白い戦艦を睨み付ける。先の白色の砲撃が何なのかは未だに分からなかったが、そんな疑問は血がのぼった頭から消え去り、ただ敵を殲滅する事のみ考える。

 その指示も短絡的な内容であり、ただ〝敵を迎い討て〟というだけであった。混乱するオービタルトルーパー隊は出撃後、全速で発進したところに無数のデブリが衝突し、戦闘前に機体が破損するというトラブルが何件も発生していた。

 そのような報告にますます激昂する司令官は、冷静な判断力を完全に失っていた。




 『シルエット』イーグル級巡洋艦3隻は、資源衛星リザードに接近しオービタルトルーパー<セルフィー>を順次出撃させる。

 通常戦闘用のTBターミナスビームライフルを装備した機体や拠点攻撃用に対艦ミサイルを装備した機体が発進していく。緑色の15メートル級の巨人達が3機1組の小隊を6つ編成し敵部隊に接近する。

 イーグル級が主砲であるターミナスキャノンを一斉に発射し、デブリで思うように動きが取れない『地球軍』量産型オービタルトルーパー<カトラス>を何体も焼き払っていく。

 それにより陣形が崩れたところに、<セルフィー>部隊が突撃しTBライフルで1機ずつ敵を確実に落としていく。

 艦とオービタルトルーパー隊の見事な連携を前に、アリア達は感心していた。戦闘シミュレーションでは基本となる戦闘方法ではあるが、実際にやるとなると味方機を撃墜しかねないため相当な練度が求められるからである。

 味方に出遅れた形になったが、<エンフィールド>も敵基地への直接攻撃が可能な位置に到達し、出撃命令が各機に下る。


『オービタルトルーパー隊、各機出撃願います』


「了解! ケイン・トータス、<セルフィーカスタム>行くぜ!」


「ルカ・ドーソン、<セルフィーカスタム>発進します」


 左右のカタパルトデッキからケイン機とルカ機が出撃する。続いて2つのカタパルトデッキにユウ機とマリク機が移動し出撃準備に入った。

 カタパルトデッキ内にターミナス粒子による重力力場が形成され、デッキ内にいる機体はその重力制御下に置かれる。


『アンデッドリーダー、アンデッド4、出撃どうぞ』


「了解した! マリク・ドーソン、<セルフィーカスタム>出るぞ!」


 カタパルトの重力制御によってマリク機が射出される。もう一方のカタパルトでは、<Gディバイド>が出撃体態勢に入っていた。

 カタパルトに展開された重力の力場により、機体が浮かび固定される。


「ユウ・アルマ、<Gディバイド>……行きます!」


 純白の機体は、カタパルトの重力制御により弾丸のように無重力の空間へ撃ち出される。

 急激に身体を襲うGによってユウの身体はシートに押し付けられ、その感覚を得てユウの表情は獲物を狩るハンターのように殺気立つ。

 直後、<Gディバイド>の背部にある2基の大型スラスターが点火し、機体をさらに加速させていく。

 <エンフィールド>を最後に出撃した白い機体は、その圧倒的なスピードで先行していた味方に合流し、4機編成を組んで既に人型兵器同士が戦う戦場に向かう。

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