第32話 パラライズ・アタック②
砲口周囲に発生した力場によって収束された
資源衛星リザードでは、接近する艦から放たれた異常な熱量に最初は驚くも、この位置に到達する頃にはその威力は見る影もないだろうと高をくくっていた。
――が、モニターに表示される熱量はその勢いをほとんど低下させる事なく近づいてくる。
その事実に次第に焦り始めるリザードの指令室ではあったが、何の準備もしていなかった状況ではどうすることも出来ず、いつものようにターミナスレイヤーを展開する事しかできない。
表示された熱量が本物であれば、こんな防御層など卵の殻の如く簡単に割れてしまうであろう。
その時、リザードの外部カメラが熱量の正体を捉え、映像をモニターに映すと、そこには今まで見た事もないような白い光が表示されていた。
「何だ……これは……?」
リザードの司令官達は、その白い輝きに一瞬見惚れながらも、あと数秒で基地に直撃する事を悟ると急いで基地全体に警報を鳴らす。
『緊急事態発生! 全員、耐ショック用意!!』
その直後、白い閃光――ヴェルブラストは一瞬でターミナスレイヤーを破壊すると、勢いを殺すことなく資源衛星リザードに直撃するのであった。
その様子は砲撃を行った<エンフィールド>のブリッジモニターに映し出されていた。
当初の攻撃目標であった、妨害電波発信装置が跡形もなく吹き飛んでいるのが確認できる。
そして、マップに表示されていた妨害電波の反応が消失し、メイがその事実を報告する。
「! 妨害電波反応ロスト!」
妨害電波消失の報告に<エンフィールド>のブリッジでは、極度まで高まっていた緊張感が収まり、歓喜の声が上がる。アリアは「ふぅー」と胸を撫で下ろしていた。
「艦内システムに異常なし、ターミナスエナジー大量使用に伴い艦の出力60%に低下、ただしAIメーティスは問題ないとの回答です」
メイが艦内状況を確認する。<エンフィールド>のシステム根幹を司るAIである〝メーティス〟は異常なしと示している。
ヴェルブラストの発射システムであるヴェルチャンバーも異常は示してはおらず、現在冷却が行われている。
「リザードの様子をこのままメインモニターに表示、あと味方の艦の確認をお願いします」
艦の各部が問題ないと分かると、アリアは敵基地や味方の動きへの確認を指示する。すると、妨害電波消失を確認した味方イーグル級の3隻は既に全速力で資源衛星リザードに向かっていた。
そのリザードは規格外の出力のターミナス粒子による砲撃を受けて、妨害電波の発信設備周辺が完全に破壊され沈黙している。
味方艦に対し、少し出遅れながらも<エンフィールド>はスラスターを全開にして敵基地へと向かう。
ヴェルブラストの直撃で生じたデブリが基地周辺に飛び散り、全速力で敵基地に近づく<エンフィールド>のターミナスレイヤーに次々と衝突していく。
「本艦のターミナスレイヤーの状態はどう?」
「一時的に出力は低下しましたが、現在は4層展開まで回復しています。デブリ程度でしたら余程巨大でない限り回避の必要性はないと思われます」
「分かりました。引き続き前方へのセンサー最大! 大型のデブリが進路上にある場合は回避をお願いします、カート軍曹」
「了解しました!」
この一連のやり取りをコックピットで聞いていた『アンデッド小隊』の4人は、今までどうしようもなかった敵基地を単艦で沈黙させた<エンフィールド>の性能とその力を引き出したクルーの実力に驚いていた。
正直なところ先日の戦いでは、この艦のクルーの実力がよく分からなかった。だが、どうやらそんな不安は
マリク機のコックピットモニターにウィンドウが表示されオペレーターのメイ・シャンディ伍長が映し出される。
『ブリッジより『アンデッド小隊』各機へ……本艦はこれより味方艦イーグル級3隻と共に資源衛星リザードへ直接攻撃を行います。敵オービタルトルーパーの出撃も確認されており、基地周辺にはデブリが大量に散見されるため出撃後は注意願います』
「アンデッドリーダー了解した。お前達もいいな?」
『アンデッド2了解』
『アンデッド3了解』
『アンデッド4了解』
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