涙痕を残したい

佳月 舞耶

【序章】まや

初めまして、佳月 舞耶と申します。


この度は本作品、『涙痕を残したい』を見て頂き、誠にありがとうございます。

本作品を存分に楽しんで読んで頂くために、前置きを用意致しました。

少し長くなりますが、見て頂けると光栄です。


私は、とある疾患を持っています。


それは、「解離性同一性障害」。所謂多重人格と呼ばれるものです。

私が解離性同一性障害だとはっきり気が付き、もう二年が経つ頃です。

二年間、一度も家族には伝えていません。

生活や仕事で苦しくなる時もありました。ただ、否定されるのが怖くて誰にも言えずのままです。

肝心の私の症状ですが、記憶はある程度共有されます。極度のストレスや痛みを感じた時に別人格の私に助けてもらう。ですが、私が外に出たくても出られない時もあります。きちんと制御ができていないのです。カメラ越しに私を見ている感じで、声も届きません。私が思ってもみないことを「私」に言われた時は弁解のしようがありません。

その時、私は泣きながら


「私じゃない、私じゃない」


といつも言うのですが、誰も聞いてはくれません。私以外に聞こえていないのです。通用しないのです。


本編での「私」は「うち」、「わたし」など一人称が変わります。これは実際に変わるので、リアリティを出すために採用致しました。


そんな中、私にも好きな人が出来ました。


元々私は恋愛が下手でよく「メンヘラ」と言われます。重たいと、そう言われます。

故に、恋愛感が合わず相手に無茶を言ったり束縛してしまったリします。


それに加えレンズから見える別人格の私。

カメラ越しに動けない私。


「私」と彼、「S」。


約1年にわたる、苦くて甘い恋の全てを彼と出会う前の私から、ひとつの舞台としてお伝えします。





では、その前に少し話をしましょうか。

関係ない話ではあるのですが…。

皆さんは世に私のような「メンヘラ」と言われる人間はどれほどいると思いますか?

その質問の答えのひとつとして、「生きた人間の数だけ」とでも言っておきますね。

人によって「メンヘラ」の度合い、価値観は違います。対人関係を持つことによってそれが目に見えてくるだけなのです。


例えば、「私ばっかり…」「どうして私だけ…」思ったことありませんか?


「私ばっかり…」は、あなたはあなたの中で生きてるのです。そう思うことはあながち間違っていません。ある人の言葉を借りると、自分の幸せは自分にしか分からない、と。


他にも、「〜より辛い人はいっぱい居るよ」と言われた人、いませんか?


…だからどうした。

まぁこんな私でも自分可愛さがありまして。

私が辛いと思ったら辛いんです。みんなが辛いなら辛いんです。

辛い、辛くないなんて本人が決めるのだから。


…それだけです。意味がわからない方も、何となくわかるって方も、「あぁ、そうなんだな。」と思って頂けたら幸いです(笑)


気になった方もいらっしゃると思いますが、今回この小説を書いた理由は、彼と別れたからです。実は本日(2020.9.24)が最後でした。


ふと頭の中で、『この涙を忘れたくない』『小説を書きたい』『残るものにしたい』と、思ったのです。


実は、小説を書くのは初めてではありません。

ですが、二年のブランクと、ノンフィクションという新しいジャンルでお届けするので、覚束無い点があると思いますが、最後まで見守っていただけると幸いです。

文章を書いていたら、楽になるんです。真っ暗な部屋から少しだけ未来が見えるんです。


そんな私が彼に伝えたい。


『「ごめんね、ありがとう。」(大好きだよ。)』


私は、彼の


―――涙痕を残したい。

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