「呪い」

「おまじないとかしてたー!」


 ぴくり、と僕の耳が反応する。

 これは前の席の女子の話だった。突然彼女は隣の友達とこの話をし始めた。


(おまじない……女子好きだよなあ。からかってた男子もいたっけな)


 そういう奴は大体その女子のことが好きだったわけだけど。僕はそういうことはしなかったけど、純粋に「おまじない」に興味があった。


「でもあれってさ、大抵揃えるべき材料家にないんだよねえー」


「わかる。赤い糸も赤い紙もあるかって」


「ないよねえ〜月明かりが当たる窓辺なんて!」


 そういっておまじないーずはゲラゲラ笑っていた。ちょっと面白くなってきた。他に何が足りなかったんだろう。というか赤い糸に赤い紙に赤いハンカチって、何に使うの。ちょっと怖い。


「赤い物って案外ないんだよねえー」


「恋のおまじないなんてだいたーい赤色使わせるよねえー」


 あ、恋の話だった。なんだ、何か呪うのかと思ってしまった。


「あとアレあれ!」


(……)


「何だっけ」


 なんじゃーい!期待しちゃったじゃないか。


「あ、そうそう、気付かれないようにするシリーズもなかなかに鬼だよねー」


「あーあるある。気付かれないように靴履いて三歩歩くとか、指に書いたハート机に押し付けるとか、偶然装ってメールに謎のアルファベット三文字打つとか」


 知らないうちにそういうことされて、好きな子だったら嬉しいんだろうけどそうじゃなかったら恐怖かもしれないと思ってしまう僕は冷たいのか。世間の声を聞きたくなった。


「そう!っていうかさー、好きな人のこと『彼』とか思うと……キャラじゃなさ過ぎて笑っちゃうよねー、今思うと!」


 散々喋ってオチはそこか。

 やっぱり「ギャップ萌え」は最強要素の一つらしい。

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