山田花織の日常。

「お一人様」

　寝ている。思いっきり寝ている。

(あ、倒れ……)

　……なかった。全校集会中に教諭が椅子から転げ落ちるなんてとんだ失態だろうから、ここでは先生の諸々が守られたことに安堵しておこうと思う。

(それにしても、よく寝ている)

　僕は集会の類があると教師陣を伺い観察してしまうのだが、我らが数学教諭は毎回よく寝こけている。OB生にネタにされ、それが受けているくらいだからきっと僕以外にも気付いてる人は多いのだろう。

　そういえば授業中、自分でも寝たネタを発表していた。聞けばセンター試験の国語の時間に少々寝てタイムロスをしたらしい。青ざめたそうだ、そりゃそうだ。

　先生方にとっても束の間の休息だろうとは思う、この進路講話という名の座談会は。だから気が抜けてる様子の先生方もいるから観察していて面白い。

　しかし英語教師というのは他教科に比べて結束が硬いように見えるのは僕だけだろうか。結束というか、単純に仲が良い。

(しかしこっちも面白いトリオなんだよな。あ、今日は一緒に座ってないんだ、残念)

　独身三人トリオはいつも楽しそうに見える。なんせ先生が三人で夕食を共にするというのだから相当仲がよろしい。

(まあ、このトリオは解散済みなんだけれど……)

　悲しいかな、三人のうちの二人が同時期に結婚ラッシュを起こしたのだ。教科書に残すとしたら「新婚蜂起」だろうか。いや、蜂起したいのは残された一人の方か。

　一人残されたお一人様先生は実は僕の推しだったりするからいじましい。

　一緒にゴールしようと誓い合ってゴールテープを切るのはいつも一人。

　この世はやっぱり理不尽で無情な一面を持つ小悪魔なんだなあと感じる今日の僕でした。