第65話 1年C組の挑戦状!その②
「ピー!!」
開始を告げる笛の音と同時に俺(大橋)達10人は前進を開始した。
先頭は信長、皆その後を追走する。30メートル程進んで障害物に
身を隠したあたりから、敵の射撃が激しくなってきた。
それをかいくぐりながら小さな森へと侵入。
後は木々に身を隠しながらの撃ち合いになった。
匍匐前進しながらなんとか森を抜けると小さな広場になる。
敵の射撃は益々激しく、広場から先に進むには
それなりの数の敵を倒さなければならないが、
どうやら相手ははこちらの倍以上いるらしい。
「ひでぶ!」アレックスの野郎が早くも戦死した…。
「仇は取ってやるぞ!」俺はそう言うと、機銃モードで連射し、
少なくともふたりの敵を倒した。
山口多聞は金に物を言わせた高級な銃を持っており、
正確な照準が可能で初速の早いその銃、
そしてこれまた特殊装備の手榴弾を駆使して、相当数の敵を倒している。
さすがはサバゲー部…と、思いきや、
「チェストー!」という鋭い気合と共に突撃してきた土方歳三に連射され、
「大日本帝国海軍万歳!」と叫んでこれまた戦死を遂げた。
まったく調子にのって突っ込み過ぎなんだよ…。
「おい、大橋殿、これはちょっと旗色が悪いのではないか?」
近くにいる天音が声を掛けて来た。
「そうだな、相手の数が多すぎる。これ以上深入りするとやばいな…。
兎に角障害物に隠れて隙間から狙撃する…これに徹しよう。
お互いの背中を守る形をとろうぜ」
「承知」
俺と天音は互いに背を向ける形を取って、その場所で狙撃に徹する。
と、5人程だろうか、後方から味方が追加で援護に来た。
どうやら先方隊危うしと見た義弘が増援をよこしたらしい。
奴は本陣で双眼鏡を見ながら戦況を確認している様だ。
【へぇ~、中々総大将らしいじゃん。この絶妙な増援のタイミング!】
俺はそう思ったが、敵C組…新選組の陣羽織を羽織った…
近藤、土方、沖田、永倉の攻撃は鋭く、やもすると押されがちになる。
と、前にいる信長がハンドサインを送って来た。
【頃合い良し、後退を開始する】
俺たちは互いに合図すると、ゆっくりと後退を始めた。
しかし、後退するのは前進するより難しい。
増援も含めた先方隊15名中、この後退を完遂して
所定の位置まで下がれたのは7名に過ぎなかった。
俺たちの後退を追って、近藤、土方、沖田、永倉達が
猛追してくる。このまま一気に本陣まで突き進むつもりらしい。
もっとも本陣から20メートル程手前にはこちらの狩場…、
すなわち20名以上からなるA組十字射撃隊が控えているのだが…。
ともあれ、かろうじて後退して来た俺たちは、狩場のあたりまで来ると、
一斉に分散して障害物の影に身を隠した。
それを追って来たのは近藤以下20名余り、A組本陣前は
小さな広場となっており、その周囲に障害物がいくつか建っている。
島津の旗まで残り20メートル…そしてそこには床几に座った
島津義弘が泰然と座り、本陣防衛隊として5名程が傍に控えていた。
「よし、あれがA組の旗だ、一気に頂くぞ!」
近藤勇の号令一下、
C組の20名程が一斉に銃を構えて走り出す。
その刹那、島津義弘が叫んだ。
「頃合いはよか!鉄砲隊放て!」
次の瞬間、周囲の障害物の影で手ぐすね引いて待機していた、
A組の十字射撃隊20名余りが一斉に射撃を開始した。
同時に本陣にいる義弘以下5名も猛然と撃ち出す。
3方向からの凄まじい十字砲火、先方隊の犠牲をもって敵を死地に落とし込む…
まさに釣り野伏せである。
C組の20名あまりは島津の旗を目前にしながら、
猛烈な射撃の前に次々とヒットされ、大半がここで戦死、
近藤もあえなく討ち死にし、土方は残兵を纏めると、
急ぎ後退を始めた。「もはや刀の時代ではないのう!」と捨て台詞を残して…。
「今じゃ!敵は怯んだ!追撃でごわす!」
この義弘の命令で、A組は残る全兵力をもって追撃を開始した…。
この時点でC組の残党は10名程に過ぎず、この撤退戦の最中、更に兵を減らし、
ついにA組はC組の本陣の眼の前までやって来た。
これで勝ったと俺は思ったのだが…甘かった!
突然、ドン・ドンという連続音がしたかと思うと、
空から大量のBB弾が降って来たのだ。
C組の本陣を守る守護神、船坂弘の秘密兵器、擲弾筒が火を噴いたのである。
擲弾筒は大量のBB玉を曲射してくるから、避けるのが難しい。
これにはA組も意表をつかれ…このBB弾の雨に大量の戦死者を出した。
更には船坂弘の正確無比な銃の連続射撃で、ここにA組は全滅…。
信長も俺も戦死、島津義弘も全身に銃弾を浴びて壮烈な討ち死に、
天音も鈴音先生も戦死した。
無念…もはやこれまでと思った所…突然【ヒット!】という声がして、
C組最後のひとり…船坂弘も戦死、…ここにC組も全滅した…。
いったいどうなってるんだと思っていたら…
そこにはニコニコした…如月雪音が立っていた…。
「ええっと、怖いので一番後ろからゆっくり来たのですが…。
確かこの旗を取れば良いのですよね…えい!」
こうして両軍唯一の生き残り…如月雪音によってC組の旗が奪われ…
ここに戦いはA組の勝利に終わったのであった…。
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