第64話 1年C組の挑戦状!その①
2023年3月初旬…まもなく終業式を迎える早苗実業学校高等部、
1年A組の島津義弘の元に、丁重に押紙で包まれた書状が届いた。
義弘がその書状を開くと…
「我は1年C組の近藤勇である。我は貴殿と同じくサバゲー部所属であるが、
学年の最後を飾るべく、それぞれのクラスの有志を率いてサバゲーによる決戦を
致したいと存ずる。勇猛で知られる1年A組の諸氏が、まさか逃げるとは思わぬが、
よくよく相談の上回答されたし。期日は今週末とする」
さて、その書状が届いた週のHR、島津義弘は教壇に上がると、
その1年C組、近藤勇の書状を全員の前で読み上げて言った。
「これは挑戦状でごわっど。男児たるもの、こげん挑発ば受けて
逃げもすは恥辱にごわす。じゃっでん、1年C組からの挑戦、
受けて立つ事にしもすが、異存ばあるもんはおっど?」
これを聞いた如月天音が立ち上がって言った。
「女子でもこげん挑発ば受けて逃げもすは恥辱でごわっど。
はよゆっさ(戦)支度ばするでごわす!」
「で、あるな…!」
織田信長の眼がキラリと光る。
「おお~~~~~~~~~!」
クラスで大きな歓声があがった。
その様子を見た鈴音先生が言った。
「よかよか。そんじゃ早速挑戦ば受ける旨、1年C組へ返書ば出すばい!」
こうして3月のとある日曜日。1年A組とC組の有志と言うか、
クラス全員が会場となる青梅市のサバゲー場に集合した。
両クラスとも全員が参加するあたり、この結束力の高さ…
いや、単にノリが良いだけの様な気もするが、まあ、悪い事じゃない。
このサバゲー場は小さな森と広場が点在しており、随所に障害物があって、
中々一筋縄では攻略が難しそうな…かなり本格的な作りになっている。
ちなみに機材はサバゲー会場とサバゲー部からのレンタルである。
1年C組はクラス委員長の近藤勇を総大将に、剣道部所属の土方歳三、
沖田総司、永倉新八、サバゲー部所属の船坂弘(ふなさかひろし)、
明智光秀、桂小五郎、坂本龍馬、三島由紀夫、女子では卑弥呼、
額田王君、木下ねね等々…中々錚々たる顔ぶれである。
対するA組もクラス委員長兼総大将の島津義弘、山本権兵衛、織田信長、
高杉晋作、山口多聞、芥川龍之介、浅井茶々に細川玉子、紫式部に藤原薬子、
如月姉妹に鈴音先生…。これも錚々たるメンバーと言って良いだろう。
衣装は皆それぞれ、…防弾用のゴーグルや脛あては当然あるが、
如月姉妹や鈴音先生は剣道着姿だし、島津義弘に至っては鎧を着用している。
いくら何でも動きにくいと思うのだが、こういうのは気分も大事らしい。
C組の連中も新選組の陣羽織を羽織っているしな…。中々華やかだ。
ちなみに俺(大橋)とアレックスは、会場で借りた迷彩服を着用した。
銃の扱い方とかはスタート前に会場で説明があり、
敵味方識別の為、A組は全員白いたすきをかけている。
ルールはそれぞれの本陣に掲げられた旗を、
先に奪った方が勝ちという単純なもの。
その他は通常のサバゲーのルール通りだ。
制限時間は1回1時間で設定、実戦さながらだ。
C組の本陣には【誠】と大書された旗が掲げられ、
A組の本陣には島津家の家紋、丸に十字の旗が掲げられている。
距離は結構離れているし、途中小さな森や藪、
障害物があるので、戦術が重要になる様に思われる。
両軍、それぞれ分かれると、A組は作戦会議にはいった。
ここで総大将の島津義弘は、全員を集めると言った。
「ここは島津家伝統の戦術、釣り野伏せでいくでごわっど」
「ごわす、ごわす」
山本権兵衛がうなずく。
「釣り野伏…敵を誘引して三方から包囲攻撃する…であるか…」
信長も頷いている。
「兵の大半はサバゲー初心者でごわす。そげんもんにいきなり
難しか任務はできもはん。じゃっでん、所定の場所に待機ばさせ、
先方隊が上手くそこに敵をば誘引し、引き込んだ所で
一斉射撃を浴びせるでごわす」
島津義弘の言葉に山口多聞が頷く。
「集中射撃で敵の数を減らし、それから先はこちらの数にものを言わせて
総攻撃をかける…後の先というやつですな…。
C組はサバゲー部や剣道部の突撃馬鹿が多い…上手くゆくでしょう」
「よかよか…」
鈴音先生も頷いている。
「では皆の衆、この絵図に基づいて配置に付くでごわす。
敵をば誘引するはサバゲー部所属の信長、多聞、
剣道部所属の晋作、権兵衛、それから大橋に岡本、
如月天音、鈴音先生他合計10名。
敵を叩き、のち軽くあしらい、敵ば前に出てきたら、
この絵図の場所まで誘導するでごわす。
後はおいの合図で一斉射撃でごわっど」
「合点承知!」
皆が一斉に答えた。
「では皆の者、出陣じゃ!えい!えい!お~~!」
鈴音先生の合図で全員で鬨の声を上げる。
するとC組の方からも鬨の声が上がった。
いよいよ決戦開始である。
その②に続く…。
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