第32話 早苗祭…その②

早苗祭3日目。

夕方16時から最後のライブが行われる。

いよいよみんなのお待ちかね…ティーチャーズの登場だ。

既に会場は超満員。既にステージにはギターの緒賀ちん、

ベースに3年の英語男性教師、フレディー阪本、

(冗談抜きでクィーンのフレディーそっくり)、ドラムのハルゼー、

その3人が登場している。緒賀ちんはいつものバンダナメタルスタイルに

グラサンと黒ブーツ、フレディーは本物と同じく短髪に口ひげ、

純白のピチピチタイツスタイル(胸毛ともっこりが気持ち悪い…)&白のブーツ、

ハルゼーの野郎はアメリカ西部のガンマン、ジョン・ウェインみたいな恰好だ。

いやはや何とも…形容しがたい異様な雰囲気が会場を包む。


バンドはステージで軽くチューニングの確認をすると、

ドラムのハルゼーがワン・トゥ・スリー・フォーとカウントを始めた。

緒賀ちんのテレキャスターが最初のギターリフをぶちかまし始める。

ジャッジャ~ン・ジャジャジャ~ジャジャジャジャン~

この聞き覚えのあるリフ…ローリングストーンズの代表曲、

【Satisfaction】サティスファクションだ!

と、思うなり鈴音先生がステージに登場して来て叫んだ!

『さあ!みんな!これがこの早苗祭最後のステージよ!

思い切り楽しみましょう!』


俺は彼女の恰好を見て更に度肝を抜かれる。

今にも見えそうな、いや普通にパンティーがチラ見えしてる

赤の超ミニスカート、それにランジェリーみたいな純白の上着…。

エロい巫女さんスタイルだ!巫女さんの衣装をイメージしながら、

スカートを徹底的に短く、上半身もかなりの部分露出させる…

可愛いさとエロチズムを併せ持った様な…。

露出度の高さから彼女の体のスタイルも良くわかる。

小さい体ながら出るべき所はしっかり出て、

くびれるべき所はしっかりくびれている、

まさに絶妙かつ美しいプロポーション。

そしてその容姿も素晴らしく可愛い!男なら問答無用で鼻血もの…。

おいおい、教師がこんな格好してていいのかよ…。一番過激じゃないか…。


そして彼女はノリノリで歌い始める…。


あたいはちっとも満足できないの~

あたいにゃ男どもたちから何の反応もないんだもの。

試したわ。がんばったわ。何度でも。そりゃもう。

でもなんもなし!なんにもなしよ!


あたいが世界中を飛び回って、

やることやって仕事もして、

男を作ろうとすると

お嬢ちゃん、また来週にしたほうがいいぜ!とか言いやがるの!

そりゃヤル気なんて失せちまうでしょ?

何にもナシ。そう、何にもよ!

そう、そう、そう。それが言いたいのよ!


なんもなし!なんもなしよ!

満足なんかできませんってば!

満足なんか!満足なんか!満足なんか!


元々の歌詞は男用だから、多少単語を女用に変更しているが、

鈴音先生の歌う英詞を訳すとこんな感じだ。

真田昌幸を知ってる…400年以上生きている比丘尼が歌うセリフとしては

どうかとは思うが、まあ、オリジナルの歌詞はミック・ジャガーだしな…。


赤の超ミニスカートでノリノリの鈴音先生のハイトーンボーカル、

緒賀ちんはオープンGと呼ばれるストーンズ独特の

ギターチューニングでギターリフをぶちかます。

会場は1曲目から総立ち状態だ!


1曲目が終わると、鈴音先生のMCが始まる。

『こんばんは!ティーチャーズです。この早苗祭は生徒主役のお祭りですが、

あたしたち教師も負けちゃいない、いやパワーでは遥かに上回るって事を

生徒達に思い知らせるべく結成しました。

曲はローリングストーンズのコピー中心、

この早苗祭の最後を盛り上げるべく、最後まで逝くよ~!!!!』


『うぉ~~~~~!!』

会場はもはやノリノリの狂乱状態だ。


そして2曲目が始まる。

これもストーンズの超有名ナンバー【Jumpin' Jack Flash】

緒賀ちんが再びオープンGのテレキャスターでリフをぶちかます。

そして鈴音先生が歌い始めた。


I was born in a cross-fire hurricane

あたいは火炎飛び交う激しい嵐の中に生まれたのさ。

And I howled at the morning driving rain

そしてあたいは激しい朝の雨の中、泣き叫んでた。


But it's all right now, in fact, it's a gas

でも今はわりとオールライト!OKってとこね!

But it's all right. I'm Jumpin' Jack Flash

でも今はわりとオールライト!切り裂きジャックは輝くのよ!

It's a gas, gas, gas

そう、そしてそれはガスの霧の中なの…。

 

I was raised by a toothless, bearded hag,

あたいは歯のない魔女に育てられた。

I was schooled with a strap right across my back

あたいは背中を鞭で打たれてしつけられたのよ。


But it's all right now, in fact, it's a gas

でも今はわりとオールライト!OKってとこね!

But it's all right, I'm Jumpin' Jack Flash

でも今はわりとオールライト!切り裂きジャックは輝くのよ!

It's a gas, gas, gas

そう、それはガスの霧の中なの…。


この曲はイギリスの歴史上有名な未解決事件、【切り裂きジャック】を

テーマにした曲だが、鈴音先生が歌うと、まるで彼女の過去の

人生を歌っているかの様に聞こえる。

けど、曲自体は超ノリの良いロックンロールである。


ティーチャーズはその後も何曲かストーンズの曲を続けた後、

ベースのフレディーがマイクを取り、鈴音先生がピアノに座り、

クィーンの名曲  ボヘミアンラプソディーを演奏する。

フレディー阪本のなり切ったボーカル…。

うむむ…これはこれで凄いかも。すこし気持ち悪いけど。

歌詞の中身は…


ママ~僕は男(の恋人)を殺した。

銃で撃ったら彼は死んだよ…。僕の人生はもう終わりだ…

雷ゴロゴロ…

ガリレオ・ガリレオ

オ~ママミア ママミア…

逝かせはしない…逝かせる…

逝かせはしない…逝かせる…

日本語で訳すと良く意味がわからない歌詞なので、以下略。

まあ、フレディー・マーキュリーはゲイだったので、

男関係のもつれに関する歌なのだそうだ。気持ち悪い…

曲はオペラ風の名曲なんだけどね…。


約1時間弱の熱烈な演奏と踊りの後、

ぐっしょり汗をかき、衣装のあちこちがスケスケになった鈴音先生が叫んだ。

『最後はみんなで歌いましょう!【I Love RocK''n roll!】』


この曲はジョーン・ジェット&ブラックハーツの超有名な曲。

サビで 【I Love RocK''n roll!】を連呼する

超強力なロックナンバー。一度聴いたら誰でも忘れないだろう。

そして当然のことながら、会場は【I Love RocK''n roll!】

の合唱の渦と化した。


『鈴音先生!ウォ~~~~~~~!』

こうして、えにも言われぬ合唱と絶叫の渦中で

その年の早苗祭は幕を閉じたのであった…。

めでたし!めでたし!…。

しかし、鈴音先生の普段からは想像出来ない姿は、

俺たち全員に想像以上の強い印象を残したのであった…。

そしてそれはのちに色々な事変に発展するのである…。

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