第24話 会長とスパイ

誰も立ち寄らない学校の図書館はリリスと僕だけの場所になっていた。

「リタともしたんでしょ」

呼び出されたと思ったら、すでに裏リリスだった。

目を潤ませて泣きそうになりながら、僕に抱きついてきた。

「あ……いや、しては……ないよ?」

「魔法で全部見えてるんだからっ」

拘束魔法……忘れがちだ。

「そんなに辛いなら外したら?」

「やだヤダヤダヤダ、外さないよ。ユウの事はずっと知っておきたいの」

涙を流し始めてしまった。

それも可愛くはあるんだけど。

拘束魔法は当分外れそうにない。

というか、リリスがこういう性格って僕以外知ってるのだろうか、リタは知ってるかもしれないけど。

まあ、知ってるよなあ

今日ね新しいことわかったんだよ。褒めて

リリスはすごいね

僕はそういってリリスの頭を撫でる。

「……ユウの記憶喪失もわかったかもしれない」

ごくり、生唾を飲んでしまう。

緊張して息が苦しくなる。

リリスを抱きしめてるときなのに。

「それは何……」

耳元でリリスが囁く。

「時間」

リリスの可愛くも怪しげない言い方でくすぐったくなる。

「時間がどうしたんですか」

「時間に関係したこと、ということだ。リタもいるのだろう」

いつの間にリリスは会長モードに戻ってる。

リタが目の前に立っていた。

「わ、いつの間に」

「呼べば現れる。それが仕事だから手荒い呼び出しも大歓迎」

リタの顔を見てると、その装束の下のふくらみを想像してしまう。

「リタは、ユウと戦ったやつを見たのだろう?」

「ああ、そんな話をしているやつがいた。ナバーゾという輩のようだ」

ナバーゾにユウは……負けたのか?

「そいつは何者なんだ?」

「装束で身を包んでいるからわかりづらいが、人間……に見える」

「どういうこと? 人型の別の何か……ゾンビとか言うの?」

僕がリリスのかわりに訊いてしまう。

「そんな十字架や光で倒せる類ならまだよかったが、彼らはどういうわけか時間を操る者達のようだ」

「……念のためにきくが時間を司る魔法は存在しないよな?」

「私よりリリスのほうが知っているだろう?」

「……得体の知らない何かということか」

いつの間にか、こんな深刻な話を忘れて、僕らは仲良ししていて少し後悔した。

少しだけ、ね。女の子とこんな楽しい生活を送ってきたんだ、そういう悔いはない。

「攻撃手段さえわかれば、対策も練りようがあるのだが」

「ユウの記憶を消した攻撃魔法が手がかりか」

……いや、記憶どころじゃなく、異次元まで吹っ飛びましたけどね。

「そう、ユウが虚言、妄言の類を言ってない、もしくはあの世界の手先だとか、私たちの仲間だと錯覚させる何かの術を使っていないのであれば」

……何も言えない。

「そんなわけがない。ユウは我が生徒会のメンバーだし、拘束魔法でしっかり監視もしている」

リリスは強く否定してくれてる。

もしかしたら、僕はそういうわけもあって拘束魔法を付けられていたのか。

……でもそれが結果的に僕の潔白を証明してくれて助かる。

「となると、やはり奇妙な術についての手がかりが必要だと言える。だが、奇妙でしかなかったのだよ。やつらのアジトは、ロストテクノロジーの巣の様だった。恐らく、失われた時代のもので構成されている」

「どうしてそんなものが」

「だからこそ、さきほど会長がおっしゃった時間がヒントなのだろう」

「タイムマシーン……なんてあるわけないですよね」

「太魔神?そんな神始めて聞いたが」

「いや、会長。彼はタイム魔人とおしゃったんです」

二人も間違えると、僕の滑舌がおかしいのか。

「……いえ、どっちも違いますがタ・イ・ム・マシーンです」

「「それってなんだ」」

二人同時に返ってくる。

いやー機械のない魔法の世界の人になんていえばいいの!

「リリスと図書館で一緒に探してる時に、何かで見たんですけど」

こういう前置きいれとかないと後が面倒だ。

「過去にいったり未来にいったりできる道具があるとか」

「オーパーツかなるほど。それなら我々が今まで見つからなかったというのも納得できる、か」

よかった……リタはこの説明で納得してくれたようだ。

「ふむ、そうかもしれないな……」

それでもリリスは納得しきれない様子だった。

「それで過去からこっちにやってきたということでどうですかね」

「……それは、私も納得しかねる。彼らの目的がわからぬ。なぜあえてこの時代に来たのか。こんな終末期に……」

それから考えても僕らにはっきりした答えはでなかった。

諜報役でもわからないのに僕らにわかるはずもないんだけど。

「わからぬ時に考えても精神が疲れるだけだ。こういう時は戯れよう」

「何をしてですか」

もう想像はつくけど。

「リタとなにやら楽しい事をしてたみたいじゃないか」

あーまたさっきの流れですよ。

「か、会長は誤解していらっしゃる。楽しい事ではなく、訓練をしていた」

「そう、訓練だ。スパイに弱点があったら困るかって」

「じゃあ、その訓練に私も混ぜてもらおう」

……会長モードリリスのドエスッ。

「ふ、二人っきりじゃなくていいんですか」

「リタには負けてられないから。ちゃんと比較してもらわないと」

……ああ、裏リリスのスイッチがもう入りかけてる。

「いや、それはどうなんだ。リタも何かいってくれよ」

「……私は二人がいいなら構わない。これもまた訓練」

リタは訓練好きだなぁ。本当にそれでいいのか、とツッコミたいけど

気が付けばみんな服脱いで僕も脱がされて、机に押し倒されてました。普通は逆なんだけども。

「ちょうどいいから寝技をかけてやろう、ユウも体得できるかもしれない」

「え、痛いのは嫌ですよ」

「ちょっと苦しいだけだ」

「神聖な図書館でこんなことしていいんですか?」

「これは神聖なコトだ」

リリスの言うことに間違いはない。

確かに人類激減の時代からしたら神聖で尊さすらもあるかもしれない。

「これはかないませんね……うぶぶ」

いきなりリタに密着されて、胸をおしつけられている。

リタはほのかな柑橘系の匂いがした。

「この前にみたいに訓練してくれ……」

リタは悩ましげに僕に懇願する。

この度胸は……羞恥心が壊れてるからなのか、好奇心なのか、

僕はそこまで難しいことはわからないけど、揺れる柑橘の二つの胸は僕に期待してるように思えた。

「止めようとしてもやめないからな」

「かまわな……ひゃんっ」

少し吸い付いただけで可愛い声をあげる。

「弱いのにまだやるのか」

「私はスパイだ。屈したりはしな……ぁぁぁん」

「でもさっきからエッチな声がでてるよ」

「こ、これは、自分を鼓舞……はぁっ、している、だけだ」

リタから汗が噴き出してくる。

ふとリリスはどうしたものかと振り返る。

「あれ、リリスは参加しないの?」

「たまには、じっくりユウがしているのを見てみたいから……」

リリスは頬を赤らめ興奮しているようだ。

「……さいですか、会長に見られてるぞ、リタ」

「このような所をみ、見ないでください、会長」

リタの声が変わった気がする。会長を慕っているからこそネタにされると

よろこぶ……ということかな。

「ユウを貸してやるんだ、じっくり細かいスキマまで見せてもらうぞ」

僕以外には会長モードなんだ……。

「そ、そんな」

余裕のあったリタにも動揺があるようだ。顔の表情が緩み始めている。

「たくさん汗がでてきたね。果物っぽかったのにしょっぱくなってきた」

「い、言うな」

またリタがびくっと震えた。リタは言葉責めには弱いらしい。

いや、仕事で逆にありえない分、その反動かな。

「リタはあまり慣れていないのか、さっきからせめられっぱなしじゃないか。

ユウにも触ってみろ、なかなかいい体をしているぞ」

「その言い方はちょっとおじさんぽいですよ」

「ユウはこういう私は嫌い?」

「き、嫌いじゃないですよ」

「ふふん」

リリスは言わせたがりだ。

「わ、わかった。さわるぞ、ユウ」

リタはそういって僕の下部におそるおそる触れてくる。

「もう少し……強く」

「スパイ活動は、こういう拷問は受けないのか」

「私は捕まらない、生きて帰ることが仕事だからな」

確かに、深追いして捕まればタダじゃ済まないだろう。魔法の最悪の拷問ってなんだろう。

「リタ、もう少し強く……」

「なんだリタ、私が教えてあげようか、ユウが喜ぶポイントを」

そういってリリスも僕に触り始める。

程よい力で刺激されて心地いい。

「大きくなった……」

リタは大きく目を見開いてまじまじとみている。

「そしたらキスをするんだ」

リリスの指示通りにリタは僕に唇を重ねる。

少し意地悪したくて、リタの舌を甘噛みする。

「ひうっ、舌先を噛まれると変な感じがする」

リタの痙攣が舌を通してダイレクトに伝わってくる。リタの鼻呼吸も荒くなってきてた。

「こうしてみるとリタも可愛いじゃないか」

リリスも意地悪そうな顔でリタの胸を攻め始めた。

「ひゃっ、ごめんなさい」

なぜか、悪いこともしてないのに謝り始めるリタ。

「だめだ、許さない。こんなに先を硬くしてるじゃないか」

「ひうっ、許してください」

リリスもノリノリだ。

そうかリリスは二刀流だったのかと一人で納得してしまう。

二人の交流を見てるとなんだか百合っぽくなってきたな。僕がいるから三人だけど。

「ユウ、私もかまってよ」

裏リリスが上目遣いをしながら、僕を強く掴んでくる。そんな言われ方したら、ドキッとさせられて

たくさんかまいたくなる。

「うん」

とだけ言って僕はリリスの身体に手を伸ばす。

リリスはなんとなく優しく触られるのが好きなんだろうなと思って、壊れ物を扱うように丁寧に、リリスをなぞる。

「本当に、久しぶりだから」

リリスは嬉しそうな切なそうな顔をする。

「ごめんね」

謝るしかない。

「ううん、私もごめん。わがままで」

リリスの本音かな。こういうときだからこそ言えるのかもしれない。

リリスの身体は、触るだけでぷるんと揺れるような具合だった。

というかいつのまにか、僕は女の子を冷静に分析してるんだ。見えないうちにサイレントレベルアップしてたな。

とバカなことを思いながらもリリスの、くびれた所から曲を描いた部分を優しく撫でる。

「ユウはそこが好きなの?」

「なんか桃っぽくて美味しそうだから」

すべすべしていて、弾力があって、なぜか目が奪われてしまう。

「ユウのバカぁ」

リリスがさらに顔を赤らめる。

 こんな幸福な時間がいつまでも続いたらいいのにな、そう思っても、いつか僕は前のユウみたいに、謎の敵と対峙するだろう、とリタが現れた時からそう思い始めていた。


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