16話 天楼山で植物栽培
「……やっぱり……こういうことか……と思いましたよ」
「すみませんユウ様、お任せしまって」
僕は今、荷物を抱えて、登山の最中だ。この重い荷物を抱えて頂上へ行くらしい。
頂上は遥か遠い。
「いえ、いいんですよ。景色は綺麗で空気は気持ちいいですから……この 荷物さえなければ」
「私が変わりましょうか」
「いえ……女の子に……くぅ……持たせるわけには……」
異世界に来て真っ先にやらないといけなかったのは、もしかしたら筋トレだったのかもしれない。前世の僕はガリガリだったからなぁ。ユウの基礎的な体力に頼りきりだったのはあるなぁ。
「あと……大体……3分の1かぁ」
長いな、そう思うと更に長く感じるのかもしれない。
……上を見ないようにしよう。
「ユウ様、失礼しますっ!」
その言葉とともに、何だか突然軽くなった。
「あ」
そんな言葉しかでてこなかった。
なぜなら、ガーベラが片腕でいとも簡単に持ち運んでいるからだ。
「植物を育てる女の子って、か弱い印象がおありと思いますが、実は全くの逆で、重い肥料や鉢を運ばないといけないので男性並の力はあるんです。
……ユウ様は、こんな女の子は、お嫌いでしょうか」
「いやいやそんな!それでもガーベラはガーベラだし。いきなりオークですとか言われると困るけど」
「私、実はオークなんです」
「ええっ!」
「うそです」
悪びれもしない笑顔を僕に向ける。
「焦った……」
「ふふふ、ユウ様ったらいきなり青い顔するんですもん」
「いきなり低い声でハイサーとか言われたらどうしようって。体力も荷物を担いでたせいでヘトヘトだし」
「魔法で倒すのはだめなんですか」
「オークというのが信じられないかも。こんな可愛い子がオークだったら、もう何もできないなって。リリス会長の紹介だしね」
「私は、可愛くないですよ。こんな力持ちですから」
「……でも僕の顔を立てようとしてくれたよね。それに花を育てるってやっぱ大変だし優しいなって思う」
「ユウ様……」
ガーベラはそれから顔を真っ赤にしたまま何も喋らなかった。
やっと頂上にたどり着いた頃には、僕の足は限界パンパンだった。
山頂は、吠えたけるような音を立てた風が吹いていた。そして、見たことない花々や昆虫がいた。
「すごい……」
「この天楼山は、神々の大戦の名残でできたとされてまして、この山には、炎水雷が降り注ぎ、そして、地殻変動で隆起したことからこのような希少なものが見れるとされてます」
「なんか、凄まじいですね。そんな神がいるんだ。」
「なんでも浮気がばれたらしくて」
「痴情のもつれ……女性は怖いですね、神であっても」
「それで、その浮気した神様は、男のアレがもげて石になっちゃったらしいです」
「ひぃ……」
思わず下半身が嫌な感じになる。
「だから女の嫉妬は怖いってことですね。ユウさんも気をつけてくださいね」
「はい……それはもう重々と」
今まで触れてきた女性陣が色々思い浮かんでくる。
会長は僕を鎖で捕まえて監禁するかもしれないし、ミルルは僕がなにもできないように、手足をとられてしまうかもしれないし、他にもおぞましいことが簡単に思い浮かぶぞ。
「あ、でも私はユウ様を信じてします。もし何かあったら、この山で二人楽しくいつまでも過ごしましょう。人類がたとえどうなってもいいので。私たちが人類最後のアダムとイヴというのも美しいじゃないですか」
「そんなさらっと終末戦争が起きた後の世界を想像しないでくださいよ」
僕の周りの女性はどうしてこうも想像力が逞しいのだろうか。いや、この場合妄想力か、いやどっちもよくない!
「ふふ、もしもの場合ですよ、もしもの」
「それで、肥料はどうしたらいいんですか」
「あ、手袋をつけてください、被れます」
「被れ止めの魔法ぐらいなら使えますよ」
「それでは意味がないんです。自然に触れてください、はい、手袋です。あ、そのあとは、土を耕します」
「思ってたより大変ですね」
「そうなんですよ、でも美しい花ができたときは良かったあ〜って思うものなんですよ」
ガーベラの熱弁にへえ、といいながらせっせと耕していく。なんで異世界で農業みたいな事やってんだろう。
そう思いながら、せっせせっせ、しゃこしゃこしゃこと音を出しながら大地は耕される。
「これはもう明日筋肉痛だな」
また、整体さんのお世話にでもなろうかな。
「……あーそれは私がとっておきのマッサージをしますから大丈夫です」
ガーベラが顔を赤めている。
「いや、そんな悪いですよ」
「手伝ってもらってるので遠慮しないでください」
「……ではあとでお願いします」
「はいっ」
妙に元気な挨拶が耳に残った。
「それでは、ぼちぼち種を植えましょう」
「あの、今更ながら気づいたのですが、これでは今日中に収穫とまではいかないのでは?」
「え? リリーから聞いてないんですか? 本格的な研究はお花が育ってからですよ」
「……これは気が遠くなりそうだ」
「そうおっしゃらず、楽しみましょう」
確かに可愛い女の子と二人で楽しくないといえば嘘だ。肉体労働をしても肥料をまいていてもいい匂いが……。
「ガーベラさんて何の香水使ってるんですか、ずっといい匂いがするけど」
「特にこれといって香水は使ってないんですけどね。……でもしいていうならバラを毎日食べてます」
「え、バラって食べれるんですか」
「食べれますよ、ジャムとかにすると美味しいですよ」
「でもバラを食べると何でいい匂いに?」
「あ……その……」
今までにないほどの真っ赤になるガーベラ。
「あうあう……」
ガーベラは慌てて距離をとろうとする。
僕は、もっと匂いが嗅ぎたくて近く。
するとガーベラは離れる。だから僕は近づく。離れる近づく離れる近づくと
それを何度も繰り返したかの後に、ガーベラは言った。
「それは……私の……汗……はず、か、しい……です」
「ガーベラの汗は……バラのにおい」
「い、いわないでくださいっ!」
「ご、ごめん」
「そのかわり、そのかわり、撫でてください……」
「う、うん」
「良いっていうまで……」
「はい」
僕まで恥ずかしくなってきた。
ガーベラの髪は、ふわふわさらさらしてる。
撫でながらガーベラを食べたらきっとバラの味がするのかなと言い留まった。
口にしたら怒られそうだから。
「ああ、その撫で方いいです……風も気持ちいい」
「まさか、山頂で女の子の頭を撫でるとは思いませんでした」
「ご迷惑、でしょうか」
「いいえ、そんなことは」
「意外です……リリーとはそういう関係かと思いましたから」
「……いえ、そんなことは」
ある意味もっとすごい関係だよな。
「そうですか……」
ガーベラの声は期待に満ちた声の様だった。
「その声はどこか、切なくも愛おしくて、また優しい気持ちにさせるようだった。
「優しい気分にさせてくれてありがとう」
「あの、首のほうも撫でてくれませんか」
「首を撫でるってどうやれば」
「ん……ただ、触ってくれればいいので」
「……じゃあ」
言われた通り、ガーベラの首筋を人差し指で1を書くようになぞっていく。
すると、びくっと痺れたかのようにガーベラは身体を震わす。
「んぅ……んぅ」
ガーベラの吐息の音だけが聞こえる。
「大丈夫……ですか」
「大……丈夫じゃないです。なんか下のほうがおかしいです」
「舌ですか? 口の中みせてください」
ガーベラの顔に両手で手を当て、近づいた。
すると、さらに甘い花の匂いがする。
まるでガーベラ自体が花のように。
その匂いがとても心地良くて、僕は舐めたら甘いのかなと思ってしまう。
ガーベラの舌は、美味しいのかな、舌から滴る唾液が、甘い蜜のように見えてきて吸いたくなる。
「ち、違。ベロじゃないです……下半身のほう……です、ごめんなさい……。」
ガーベラが泣きそうな顔で僕を見つめてくる。
「もしかして、恥ずかしいんですか」
「その恥ずかしい、というのはわからないんですけど、なんかユウさんに見られると、うわぁぁぁぁってなります、お花畑が見えそうになります」
「それは、いってはいけないお花畑!?」
「とても美しいお花畑なので行きたかったんですが、その前にドキドキもしちゃって動けなかったdす」
「それが恥ずかしいってことなのかもしれませんね」
「あの……見ないでください、着替えるので」
「わかりました、反対のほう、向いときます」
ガーベラの眠っていた羞恥心が起きたということなのかな。
ガーベラが着てたのはワンピースだからきっと時間もかからないかな。
ファスナーを下ろす音と、衣擦れの音が妙に僕の想像を掻き立てる。
「ああ……こんなとこまで濡れてる……私もう16歳なのに……」
小声で呟くと尚更、エッチに聴こえてしまう。
視界は美しい渓谷と鳥の鳴き声が壮観とさせるはずなのに、ガーベラのことが気になって仕方ない。
「……あのっ、あのっ、今気づいたのですが」
「ええええ、ああ、はい」
「……エプロンと道具があってぬげなくて……」
「地面に置いたらだめなんですか」
「はい……おばあちゃんの教えで……ううっ……道具は置いてはいけないんです、だからっ……脱がすの手伝ってもらってまえますかっ」
ガーベラのおばあちゃんナイスです!。これは超合法的にガーベラが見えるぞ。
僕は心の中でガッツポーズした。
「じゃ、じゃあ向きますよ」
僕が振り向くと、ガーベラは、お尻だった。いや、ぷりっとした白いお尻が見えていた。ピンクのパンツとピンクのブラで、白い肌が一層そのピンクを引き立てていた。なんでかわからないけど、片手でパンツのまたの部分も抑えて、そして、片手で道具とエプロンを握っていた。
「早く……とって……」
ガーベラが身体をもじもじさせながら懇願するような姿に、僕は何も言えない。
彼女は小刻みに身体が揺れて、柔らかそうなお尻と胸が揺れている。
このままでは流石に可哀想だなとおもってエプロンを手に取る。
「とっとと」
ずしりと重たさが手にかかり、思わずよろけてしまう。
「ごめんなさい、重いですよね」
「大丈夫、だけど、いつもこんな重いものを?」
「はい、お花ってすぐ手入れしないと枯れちゃうんですよ。水と肥料を適宜与えないといけないし、虫とって、病気の葉っぱを取り除いたり、そうしないとすぐ元気なくなっちゃうし、天気が悪いとお家にいれたりもします」
「すごいですね」
「いやぁぁぁ、ほめないでください」
ガーベラが身体をくねらせて恥ずかしがる。お尻と胸が揺れてエッチだ。
「ご、ごめんなさい、でもガーベラの優しさが伝わってきますよ」
「わたし、優しいですか」
「はい、とても」
「ほめても何もないですよ、着替え終わりました」
「はい」
僕はガーベラの身体を見てなかったふりをして、エプロンを渡す。
「でもそれをおっしゃるならユウさんだって、あのリリーと生徒会でやってることがすごいですよ」
「まあ、苦労はしてますね。や、でも会長も可愛い所もあるので仕方ないかなと思うことも」
「……むぅ。リリーが羨ましいです。ユウさんといられて」
「生徒会だから仕方ないですよ」
「……そういうことじゃないです、もう」
わわ、ガーベラが急に不機嫌に。
「でも、これからはガーベラさんとも会うようになると思いますよ」
「はい……それじゃ種まきをしましょう」
「え、今から種まきですか?」
「もとからその予定でしたよ、いきなり羞恥に関する植物なんてできませんから」
「それもそうですね、ってどれぐらいかかるんですか?」
「そうですね、咲くまで、半年ぐらいでしょうか」
「うわ、そんなにかかるんですか」
「わりと普通ですよ。」
「魔法の力でなんとかなりませんか」
「魔法植物というのもあったんですけど、やはり魔法の力は不安定でして、成長促進した植物が食人植物になって丸呑み、とか過去にあったそうですよ」
「はは……それはいやですね」
「ええ、気長にやりましょう。わたしはそっちのほうが好都合です」
「え?」
ガーベラが僕の腕に腕を絡ませてくる。
豊かな胸が当たって気持ちいい。
「そのほうがもっといられるじゃないですか」
その時のガーベラは顔を赤くしながらも満面の笑みだった。
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